鹿島アントラーズが能動的に戦えない理由。攻勢のカギは指揮官がどこに着地点を見つけられるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影photo by Sano Miki

歴然としていた「つなぐ力」の差

「厳しいシナリオの試合になったと言える。結局は自分たちのミスで失点を招いた。そして後半、早い時間帯に2点目を失い、難しい状況になってしまった。そこで相手は有力な選手を投入し......」(ヴァイラー監督)

 後半6分には、相手のセットプレーを一度は頭で跳ね返したものの、味方のボールを受けた樋口が、エリア内で痛恨のコントロールミス。そのまま回収され、岩田智輝にミドルシュートを蹴り込まれた。

 墓穴を掘ったに近い失点と言えるだろう。

 選手の士気が低かったわけではない。その証拠に、猛暑の中で走行距離やスプリント数は拮抗していた。ただ、パスの本数は200本以上、横浜FMよりも少なかった。それだけでなく、成功率も約60%で、17%以上も低かった。ボールを持ち運ぼうとする攻防において、その差は歴然だった。

「90分間でボールを保持する回数を増やせるように、もっと突き詰める必要がある」(鹿島・樋口)

 鹿島はもう少し、能動的に戦える時間を増やさないと厳しいだろう。そのためのトレーニングが急務となる。個人のフィーリングでボールをつないでいるところが多く、組織性が低いため、時間を追うごとにズレが出てくる。横浜FMのような相手と戦うと、攻撃だけでなく守備の乱れも顕著になるのだ。

 もちろん、主体的に戦おうとすれば、自ずとリスクを背負うことになる。

 その点でも、鹿島は問題を抱えている。攻撃を重視するにはハイラインを敷く必要があるが、バックラインはややスピードに欠ける。そのためブロックを作って戦う試合が多かったのだろう。横浜FM戦では、前がかりで戦おうとしたが、案の定、カウンターで裏返しにされた時、いくつも危機が生まれた。先制点のシーンは象徴的だ。

 やはり、ヴァイラー監督がどこに着地点を見つけられるかがカギになる。

 ブラジル人選手の力をうまく引き出せておらず、稼働率の悪さは明白だ。日本人選手のパフォーマンスレベルも、やや低下している。現状はちぐはぐさが目立つ。

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