悲劇の武藤嘉紀、別格の大迫勇也、鬼気迫る鈴木優磨...。W杯前の限られたアピール、国内組ストライカー3人の明暗

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

不要論を吹き飛ばす大迫

 試合後に吉田監督は、武藤の状態について「状況は聞いてないですけど、ハーフタイムもベッドに横になってアイシングしていたので、おそらく足首のケガだと思います」と話していたが、松葉杖をついて会場をあとにした武藤の代表辞退のリリースは、翌日に流れた。国内組にとって最後のアピールの機会を失うこととなった武藤の心情は、察するに余りある。

 その武藤に代わって出場したのは大迫だった。ケガ明けで限定的な起用が続いているが、2試合連続ゴール中と、武藤とともに神戸の復活を支える存在だ。この日も本人曰く「当初は30分の予定だったけど、アクシデントがあったので」と、39分から急遽ピッチに立っている。

 緊急出場だったにもかかわらず、そのパフォーマンスは圧巻だった。とりわけ52分のゴールシーンは大迫の真骨頂だろう。自ら運んで右にはたき、そのままエリア内に飛び込んでクロスを頭で合わせた。エリア内には大迫ただひとりで、相手とすれば的を絞りやすかったはずだ。しかし、その対応をものともせず、確実にネットを揺らした。

 さらに60分には鋭いターンで入れ替わり、キム・ミンテの退場を誘発。ほかにもエリア内の深い位置でポストワークをこなし、汰木康也の決定機も導いている。数的優位になったとはいえ、後半に神戸の攻撃が機能し始めたのは、この背番号10の存在があったからにほかならない。

 コンディションが万全でないにもかかわらず、これで3試合連続ゴールである。不要論も囁かれるなか、日本の最前線にはやはりこの男が必要ではないか。そう思わせる、別格の存在感だった。

 一方で鹿島側にも、目に留まる選手がいた。こちらは待望論が日増しに高まる鈴木優磨である。

 今季古巣に復帰した武骨なストライカーは、自在なポジショニングでゴール、アシストと多くの得点機に絡み、鹿島の躍進を牽引している。ベルギーに移籍した上田がゴールを量産できたのも、鈴木というベストパートナーの存在が大きかったはずだ。

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