ヴィッセル神戸が泥沼に足を踏み入れた理由。最下位脱出へ三木谷会長の剛腕にも注目 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

チームの指針が定まっていない

 もうひとつ言えるのは、「監督を変えすぎる」ということである。そのたびに、チーム力をすり減らせてきた。フアン・マヌエル・リージョ、トルステン・フィンクは疑問の残る"辞任"だったし、今シーズンもロティーナで3人目の監督。それぞれの監督は信奉するスタイルが異なるし、日本人監督の中には明らかに力不足のケースもあった。

 チームの指針が定まっていないことが、降格も忍び寄る混乱の土台にある。

「バルサ化」。一時はもてはやされたそんなスローガンも、もはや語られなくなった。

 前節の柏レイソル戦で、神戸の三木谷浩史会長が、PKの判定に関し、強く不満を示し、物議を醸した。気の毒な判定ではあったが、正しくファウルの定義を解釈した場合、PKの判定はやむを得なかった。そんな混乱にも、うまくいっていないチームの苛立ちが透けて見えた。

 レッズ戦の前も、三木谷会長はピッチに登場し、サポーターと交流した。不穏さには敏感なはずで、次はどんな剛腕を振るうのか。ストライカー、センターバック、サイドバックなどで補強も噂されるが......。

 現有戦力で救世主となるべきは、武藤嘉紀か。前半、逆サイドからのボールにうまく入ってヘディングシュートに結びつけた場面は"希望"だった。その前後の時間帯、チームのプレーもわずかながら好転した。

「上位にいる時の敗北の痛みよりも、今の状況での敗北の痛みのほうが強い」

 試合後、ロティーナは鎮痛な表情で語った。泥沼に飲み込まれる前に痛みを乗り越える戦いが始まる。

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