昇格組のジュビロ磐田。厳しい戦いが続くなか、フロンターレ戦で示したプラス要素

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 本来、磐田の狙いは高い位置からプレスを仕掛けることにあった。

 だが、川崎の2センターバック+アンカーに、1トップのFW杉本健勇が必死でアプローチするのだが、「はがされて、時間を作られる。前向きでフリーな選手がいれば、裏をとられて失点してしまう」と伊藤監督。結果、川崎に易々とボールを前に運ばれ、押し込まれる時間が長くなったわけだ。

 そこで指揮官が打った手は、前線の配置変更。「1トップ」から「2トップ」へと変えたことが、ボールの出どころを抑えることにつながった。

 伊藤監督が振り返る。

「前線からのプレッシャーをかけることで勢いが出る。そこはうちが持っているオーガナイズ。うちのよさが出た」

 たとえうまくいかない時間があっても、適切な修正を施してやれば、試合展開をガラッと変えることができる。それだけの組織は、すでに確立されているということだろう。

 前半の専守防衛から一転、後半は攻撃機会を増やした右ウイングバック、FW吉長真優が語る。

「後半は意識して自分も前目にポジションをとった。(相手の)裏へのアクションを増やすと、ちょっと相手も引いたりするので、その時には足元が空いたりとか、そういう時間が増えた」

 前半は守備に追われた松本も、「前から積極的に守備に行くことによって、前でしっかりボールを奪えて、自分も前向きにアクションすることが増えた」と、後半の戦いを振り返る。

 85分に生まれたDF伊藤槙人の同点ゴールにしても、結果的にセットプレー(CK)からの得点ではあったが、磐田が試合の流れを変え、自分たちが主導権を握る時間を増やすなかで生まれたものだ。

 たまたまラッキーパンチが当たったわけではない。

 もちろん、磐田とすれば、「後半みたいな試合を90分間したかった」(松本)のが本音だろう。後半の修正は評価されるべきだとしても、「フォーメーションを変えてもみんな迷いなくプレーできるのだから、前半のうちに選手で修正できる部分ができたらよかった」(松本)に違いない。

 厳しい言い方をすれば、それができないから、なかなか勝ち点3をとれる試合が増えない、とも言えるのだろう。

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