家本政明がレフェリー視点で明かす、「これはすごい!」と思った現役Jリーガー5人 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

助っ人外国人のような感覚

酒井宏樹(DF/浦和レッズ)

 酒井宏樹選手は、柏レイソルでデビューした当時から、フィジカルの強さ、上下動の量、スプリント力、足元のテクニックもあって体躯にも恵まれていました。

 とんでもなくポテンシャルのあるサイドバックが出てきたな、というのが最初の印象でした。彼がオーバーラップで駆け上がってくるときの迫力は、レフェリーの私でも圧倒されるほどでしたね。

 海外で活躍した日本人のサイドバックと言えば、長友佑都選手や内田篤人さんなども挙げられると思います。彼らも十分に優れた選手で、すばらしい実績も残されてきました。

 ただ、私たちが想像できる日本人のサイドバックというイメージからすると、酒井選手を最初に見た時はそれ以上の驚きと衝撃、日本人離れしたスケールの大きさ。まるで助っ人外国人のような感覚でした。

 2011年に柏がJ1初優勝した時も間違いなく立役者のひとりでしたし、海外へ行っても余裕で通用するだろうと感じさせる選手でした。

 フィジカルや技術だけではなくて、どのタイミングで上がるか、ポジションを絞るか、相手の間を突けるかなど、彼のなかでリズムができていて、戦術眼が非常に優れていました。実際、ハノーファー(ドイツ)からマルセイユ(フランス)へと渡って、主力として活躍できたのも当然だと思いました。

 彼は、日本人でも海外でフィジカルで十分に戦えるんだというのを見せてくれました。海外の選手たちを相手にしても引けを取らないどころか吹き飛ばしていて、あれを日本人選手でほかに誰ができるのかと言われてもちょっと見当たりません。

 ただ、相手を吹き飛ばせるほどのフィジカルがあっても、変なファールをしない選手でもあります。非常にクレバーで、レフェリーに対して文句も言わないし、コミュニケーションを取るときも物腰が柔らかく、メンタル面のセルフコントロールが優れている印象です。

 ファールを取られても「次はファールなしでどうやったら奪えるのか」と、それがタイミングなのか、力加減なのか、非常に考えながらプレーしているイメージでした。

 でもそれが海外だと、もっと激しくいくんです。ヨーロッパでの彼は別人でした。当たっても相手が耐えられるのでファールにならない。

 だから彼ももっと強く相手にいけて、結果的にプレーのクオリティ、インテンシティが高くなり、フットボールのクオリティも高いものになる。そこをいちばん身をもって体験しているのが、酒井選手だと思います。

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