清武弘嗣がいると違う――。好調セレッソ大阪でエースがスーパープレーを見せている

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 その最たる例が、第14節の大阪ダービー、ガンバ大阪戦で放ったスルーパスである。

 0-1で迎えた58分、中盤やや右寄りでボールを受けた清武の前には、右サイドでMF毎熊晟矢がタイミングよく走り出しており、スルーパスを出すには絶好の状況ができあがっていた。

 というより、それ以外に選択肢はないかに見えた。

 ところが、清武は誰の目にも明らかな、そんなわかりやすいパスを選択したりはしなかった。

 ピッチ中央からゴールへ向かって一直線に走り出していたMF奥埜博亮がわずかに左に膨らんだ瞬間、相手DFラインのギャップに生まれた"もうひとつ"のパスコースを、清武は見逃さなかったからだ。

 正直、結果がわかった今となっても、映像を見直したところで、そこにパスコースがあったことに気づくのは難しい局面である。にもかかわらず、清武はグラウンダーのパスに少しのカーブをかけ、鮮やかに相手DFの間にスルーパスを通してみせた。

 サイドへのパスと中央へのパス。同じ相手の背後をとるスルーパスでも、どちらがよりゴールに直結する確率が高いかは、言うまでもないだろう。

 結果、このボールが奥埜からFWアダム・タガートへとつながり、同点に追いついたC大阪。その後、2点を加え、3-1の逆転勝ちに成功した。

 試合の流れを一変させる、清武の一撃必殺のスルーパスだった。

 今季、清武は開幕戦から先発フル出場を続けながら、第4節で負傷。第5節からリーグ戦3試合を欠場し、その後2試合の途中出場を経て、ようやく先発復帰したのは、第10節のことだった。

 だが、復帰後の清武は、ケガの影響などまったく感じさせず、スーパープレーを連発している。

 清武不在の間には、FW山田寛人、加藤陸次樹の若い2トップが活躍し、第6節では川崎フロンターレに4-1と快勝するなど、新たな魅力を発信していたC大阪だったが、やはり清武がいると違う――。そう思わざるを得ないほどに、現在の清武が放つ存在感は、C大阪のなかで、というより、J1全体を見渡しても頭ひとつ抜けている。

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