上田綺世はラウルと同じ"論理的思考"のストライカー。「小心者」だから「常に考えてサッカーをしている」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

――3年連続二けた得点ですが?

 5月29日、試合後の記者会見で、そう質問を受けた上田綺世(鹿島アントラーズ、23歳)は素っ気なかった。

「......(感想は)特にないです。今日は(3-1で)負けたので、それがすべて。勝つために点をとっていて、『3点とられたから4点入れないと勝てない』と思ったし、前回(サガン鳥栖戦も4-4で)も、もう1点必要だった。通算何点って、考えてないです」

 この日、FC東京との一戦では、3-0から上田が1得点し、反撃の狼煙を上げたが、それで終わった。3年連続二けた得点は、鹿島では90年代に長谷川祥之が記録して以来だが、「勝利」を土台にする彼のロジックでは意味を持たない。負けたから素直に喜べない、と意地を張っているのではなく、彼らしい論理的思考だ。

 JリーグのFWとして唯一、6月シリーズの日本代表に選ばれたストライカーの肖像とは――。
 
5月29日のFC東京戦で得点をあげた上田綺世(鹿島アントラーズ)5月29日のFC東京戦で得点をあげた上田綺世(鹿島アントラーズ)この記事に関連する写真を見る 上田はストライカーとしてはマイノリティと言えるだろう。

 ストライカーは、思考よりも本能的に答えに辿り着く選手が多いポジションである。スペインや南米では「生来的」とさえ表現されるポジションで、ストライカーは生来的才能を研ぎ澄ますことで境地に近づく。逆説的に言えば、「ストライカーとして生まれなかったら、どれだけ鍛えてもモノにならない」と、やや突き放した考え方だ。

一方、上田は論理的、思索的なアプローチをするストライカーと言える。これは守備的なポジションの選手によく見られる傾向だろう。

「自分は小心者です」

 法政大学時代のインタビューで、彼はそう答えていた。

「緊張するし、不安もある。めちゃくちゃ自信を持っているわけではない。だから考えて、かみ砕いて、整理が必要です。例えば、大学(入学)でさえも、不安で仕方なかった。自分は茨城からやってきて、全国のレベルがわからなかったので、場違いなんじゃないかって。入寮の日は緊張しました。大学1年で代表に呼ばれた時もそうで、言われた瞬間から毎日ゲロを吐くくらい緊張していました」

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