FC東京・スウォビィクが28歳で日本行きを決断した理由。「勇気は必要だったけど、結果的に最高の決断だった」

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

壁にぶつかっても諦めない

「あれは7月のセレッソ大阪とのアウェー戦だった。聞いてはいたけど、ものすごく蒸し暑くて、試合前のアップを終えた時、90分の試合を終えたような気がしたよ(笑)。でも僕はそれが日本での初先発だったので、モチベーションもすごく高くて、集中して試合に臨むことができた(0-0の無失点に貢献)。

 日本の選手は全般的に良質で、レベルはポーランドよりも上だと感じたよ。とくに印象に残ったのは、ほとんどの選手が両足とも強くて正確なキックを蹴れること。完全に集中していないと、ゴールを守れないとわかったよ」

 そんな日本の選手やチームの特長にも慣れたはずだったが、FC東京に移った今シーズンは、珍しい場面にも遭遇した。5月8日のホームでのサガン鳥栖戦で、スウォビィクが味方のバックパスを手で処理したことにより、ゴール目前のボックス内で相手に間接FKが与えられた。

 鳥栖の選手たちはこのキックの際に、何度もフェイクを入れて、5人目がシュートを放ったものの、FC東京の壁に当たって失点は免れた。このシーンは、スウォビィクの母国ポーランドでも「スローでコミカルなプレー」などと報じられている。

「本当に珍しいシーンだったよね。あそこまでゴールに近い位置でのFKはそうそうあるものではないし、彼らのアイデアも斬新だった。僕らにとっては難しい状況だったけど、チームメイトと共に落ち着いて対処でき、ゴールを割られずに済んでよかった」

 その前に4試合連続で無失点を記録した時は、スウォビィク自身のパフォーマンスにあらためて脚光が集まった。Jリーグ屈指と評されるゴールキーピングに秘訣はあるのだろうか。

「とくになくて、シンプルに毎日ハードワークするのが一番大事だね」とにこやかな表情のまま彼は続ける。

「そして常に成長を望み、壁にぶつかっても諦めないこと。幸運にも、ここまでのJリーグではいい働きができていると思うけど、僕は過去を振り返らずに未来を見ている。よりよい未来にするために、これからも努力を続けるだけさ。

 まだまだ学ぶべきことはたくさんあるし、改善できることもある。そしていずれ、アジア最高のGKと呼ばれるようになりたい」
(おわり)

ヤクブ・スウォビィク
Jakub Slowik/1991年8月31日生まれ。ポーランド・ノヴィ・ソンチ出身。FC東京所属のGK。ユース時代から頭角を現し、スパルタザモツリーをキャリアのスタートに、スパルタ・オボルニキ、ヤギエロニア・ビアウィストク、バルタ・ポズナン、ポゴンシュチェチン、スウォンスク・ヴロツワフと国内で活躍する。2019年にJリーグのベガルタ仙台に移籍、2シーズン半プレーしたあと、2022年シーズンからFC東京のゴールを守っている。

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