かつての浦和レッズには圧倒的な個性が存在した。優等生タイプだけでは閉塞感は打破できない (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

PK奪取のシーンに勝利のヒント

 7つの引き分けのうち、唯一複数得点を奪えたのは、3点のビハインドを負いながらもキャスパー・ユンカーのハットトリックで追いついた横浜F・マリノス戦だったが、機能したのは相手のハイラインの背後を一発で突くカウンターだった。つまり、ボールを動かすよりもシンプルなこの形のほうが、今の浦和には得点の匂いが感じられるのである。

 もちろん、リカルド・ロドリゲス監督には確たるプレーモデルが備わり、それを突き詰めるのが指揮官としての責務である。しかし、停滞感の漂う現状を打破することも、同じように求められるタスクとなる。

 ヒントがあるとすれば、鹿島戦でPKを奪取したシーンだろう。この日の浦和は3バックを採用し、鹿島の強力2トップを3枚で見る形を取っていた。ある意味でセーフティな形だったが、前半終了間際に3バックの一角を担っていた明本考浩が長い距離を走って左サイドを攻め上がり、そこからのクロスがエリア内での関川郁万のハンドを誘ってPKを奪うことに成功した。

「最初は3枚回しでしたけど、相手の動きを見ながら、ベンチから4枚で回そうという声があったので、思いきって高い位置に行きました」

 結果的にはベンチの指示だったとはいえ、押し込まれた展開のなかで状況を打開するには、リスクが必要だ。明本のような大胆さこそが、閉塞感の漂う今の浦和には求められるプレーなのだろう。

 長年浦和に在籍したベテランを放出し、リカルド・ロドリゲス監督の戦術に合う選手を次々に獲得。大幅に入れ替わった今の浦和には一定以上の水準を備えた選手は揃うものの、常識外な選手は見当たらない。与えられたタスクを確実にこなす優等生タイプが多い印象だ。

「戦術うんぬんもありますが、もっとシンプルに戦うところや、勝ち点3を目指すスピリットなど、勝つために何をしなければいけないというところをシャープにしていけると、もっと勝利につながるんじゃないかなという感覚はあります」

 今季より浦和に在籍する岩尾憲は、現状の課題を口にした。言い換えれば、個々の意識の問題なのだろう。原因を精神論に求めれば「エビデンスを示せ」とか「それって、あなたの感想ですよね?」とか論破されそうだけど、やはりサッカーはエモーショナルなスポーツなのである。

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