ヴィッセル神戸に何が起きているのか。覇気のなさが蔓延して再び最下位に (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「安全」というより「逃げ腰」
 
 しかし、フェルマーレンを欠いた今シーズン、菊池は若さを露呈した。力任せのチャージが多く、ミスが目立つようになった。湘南戦で、体ごと飛び込むようなヘディングでゴールを決めたシーンは面目躍如だったが......。

 今年4月、シーズン途中で監督に就任したスペイン人ミゲル・アンヘル・ロティーナは、まず守備の安定感を取り戻すために修正に着手した。高さ、強さがあって本来はセンターバックの大崎玲央をボランチに入れ、防御を強化。ディフェンス面での安定を取り戻すことで、4-0と快勝したサガン鳥栖戦はカウンターがはまった。

 湘南戦も同じ陣形で、ポゼッションを守りに使いながら、一発にかける形だった。ロティーナらしい、ロジカルな戦い方と言える。ただ、守りの安定とポゼッションを追求する功罪か、ピッチに立った選手が消極的になった。時間稼ぎと錯覚するほどの横パスばかりか、バックパスも少なくない。セーフティな選択というよりは、明らかな逃げ腰になっていた。

 覇気のなさが蔓延し、湘南の選手の出足のよさに気圧された。週2試合のコンディションの問題もあったかもしれない。負けが選考している自信のなさもあっただろう。

 前半39分、一度は攻撃を退けたに見えたが、再びボールを拾った湘南の選手に対し、寄せが甘くなった。そこで足を振られてしまい、ミドルが当たってコースが変わったところ、GK前川黛也がどうにか弾いたが、こぼれ球を町野修斗に叩き込まれた。後半6分にも、自陣での緩慢なパス交換の隙をつかれる。GKへのバックパスは狙われていた。鼻先でかっさらわれ、またも町野に流し込まれてしまった。「やらずもがな」の2失点だった。

 その後の神戸は、叩き起こされたように総攻撃へ移っている。波状攻撃から左CKを奪い、菊池がヘディングで決めた。その後もボージャン・クルキッチが抜け出し、シュートを狙った。しかし、得点力も昨シーズンより低下していた。ドウグラスの穴埋めができず、サイドアタッカーに期待したのだろうが、パワーに欠けるのだ。

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