横浜F・マリノスを筆頭に浦和、神戸、川崎もチーム力アップ。Jリーグ再開で見えたACLの"収穫" (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

選手層が厚くなった横浜F・マリノス

 一方で、「悪い内容でも勝利する」というのが王者の資格だ。

 若い選手の台頭もあった。交代出場したMF藤田譲瑠チマ、DF角田涼太朗などルーキーが活躍。藤田はACLで6試合すべてに出場(2試合が先発)、角田も同じく5試合出場(3試合先発)で、プレー経験を重ねた。角田はセンターバックだけでなく左サイドバックでもプレーし、シドニーFC戦では決勝点を決める主役ぶりだった。

「ジョエル(藤田)の成長は嬉しい。マリノスの未来と言える選手で、ACLグループリーグを3週間、戦うなかで動きもよくなった。まだまだ飛躍できる。今日の2点目、ゴール前で絡んだのはジョエルだが、角田もそれにつながるとてもいいパスをしていた。彼についても評価してほしい」

 名古屋戦後、マスカット監督は上機嫌に話していた。

 若い選手だけでなく、選手層が確実に厚くなった。名古屋戦も、仲川輝人、水沼宏太、西村拓真などを勝負どころで投入。じわじわと戦局を有利にし、総力戦で勝利を手にした。

 何より、ACLで6試合フル出場し、決勝トーナメント進出に大きく貢献したGK高丘は海外選手のシュートを多く浴びることで、ひとつステージを上がったと言える。

 名古屋戦、前半に際どいFKがあったが、高丘は飛び出して難なくキャッチしていた。こうしたワンプレーがチームを楽にする。足技の技量が注目されるGKだが、セービングに力強さと安定感が加わりつつある。後半、右サイドのマテウスから左足での鋭い弾道のクロスに、それも相手FWが触るか触らないかで飛び込むが、指先でシュートコースを変え、ポストに直撃させて防いだ。

 横浜FMは、チームの厚みが確実に増している。連戦を乗り越えた逞しさか。3位に上昇し、虎視眈々だ。

 浦和、神戸、そして大会は敗退した川崎も、ACLを経て、チーム力は上がった印象がある。

 たとえば浦和は、ACLで6試合に出場し、5得点を記録した松尾佑介の台頭が著しい。スピードのあるドリブルが目立つが、切り込んでのシュートに本来の値打ちがある。相手の背後を取る動きにも優れ、ストライカーの匂いを放つ。

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