フロンターレはなぜ三笘薫や旗手怜央ら主力の移籍を次々と容認したのか。強化本部長の本音は「頭が痛い」

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

Jリーグのレベルは低くない

 言い方は悪いかもしれないが、猫も杓子も海外、海外......になっている風潮はある。

 だが、ここ数年、フロンターレから欧州に移籍した選手たちの事例を見れば、守田は4つのタイトル獲得に貢献した。田中は2019年に成長しながらタイトルを逃した責任に答えんとばかりに、2020年の王者奪還の立役者になった。三笘も、旗手も、同様である。

「それにJリーグクラブにいる人間としては、そこまでJリーグのレベルが低いとは思っていないんです。このリーグでも選手が成長できるところはたくさんある。だから、国内でまだやることがあるのに、場所を選ばず海外に行くことが果たしてステップアップと言えるのかどうかということは伝えています」

 いわゆる中間層が抜けることで、チームとしてのバランスや継承が難しくなることも認めつつ、竹内は「今後はフェーズをどう移行していくかが我々の課題になる」と話してくれた。

 将来性も鑑みた高卒、即戦力になる大卒と、やはりバランスを考えた補強は、未来への投資と現在の強化という狙いが見えてくる。

 今季で言えば、前者が五十嵐太陽(川崎フロンターレU−18→)、永長鷹虎(興国高→)で、後者が佐々木旭(流通経済大→)、松井蓮之(法政大→)、早坂勇希(桐蔭横浜大→)。昨季で言えば、前者が田邉秀斗(静岡学園高→)で、後者は橘田健人(桐蔭横浜大→)になるのだろう。

 今季は早くも2敗しているように、リーグ3連覇の道のりは容易ではないが、4月15日からはもうひとつの大きな目標であるACLのグループステージに臨む。鬼木達監督が今季のテーマに「スピード」を掲げているのも、国内だけでなく、アジアを意識しているからだと竹内は教えてくれた。

「パススピードしかり、判断スピードしかり、リーグ戦では対策されるなかでの打開策であり、ACLを勝ちきるために必要なピースとして"スピード"を目標設定しているところがあると、日頃の練習の空気を見ても感じています」

 現場も強化も今を見つつ、先も視界にとらえている。確固たる軸と信念もある。真のリーディングクラブになるために、アジアの頂点を目指す。

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