イニエスタの処遇がジレンマ。ロティーナ神戸はACLを浮上のきっかけにできるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

現有戦力で4-3-3は難しい

 その点に関していえば、ロティーナは守備のスペシャリストである。スペイン時代も人材やチーム状況に応じ、フォーメーションを柔軟に用い、5バックも採用している。徹底的に守備からチームを作り直すことはできるはずだ。

 ただし、不安もある。

 セレッソ戦は4-3-3を踏襲していた。クラブ首脳陣の「バルサ化」の幻想が込められているのだろうが、今の人材で4-3-3を運用するのは難しい。バックラインにボールを握って、相手を外し、見事なビルドアップができる人材は見当たらない。中盤は山口蛍の奮闘が目立つが、アンドレス・イニエスタにインサイドハーフの運動量を求めるのは酷だろう。何より、ウイングに単独でも切り込める「騎兵」が不在だ。

 あるいは、森保ジャパンのようにカウンター型の4-3-3は、オプションとしてはありうる。しかし、それには伊東純也のような相手の裏をつき、追い越すスピードスターが不可欠。決定力のあるFWも必要だ。

 ロティーナは守備のテコ入れをしながら、攻撃の答えも出そうとするはずだが、そこでのジレンマはイニエスタの処遇にある。スペインの英雄的選手に、いわゆる「ハードワーク」は求められない。それを要求すれば激しい消耗となって、そのよさを活かせなくなる。

 セレッソ戦もチームが低調ななか、イニエスタは「魔法」を使い、ため息が出るようなチャンスを作り出していた。他の選手が決めていれば......というスーパープレーを前半は連発。次元が違う存在だった。

 そこで防御力を担保し、イニエスタを生かすには、たとえば4-2-3-1のトップ下で自由を与えて、他の選手が守備をカバーする戦いがベターだろう。「3」の両ワイドは、献身的にアップダウンを繰り返す必要がある。能動的な戦い方とは言えないが、そもそもロティーナは、バルサイズムとは逆行する理論の持ち主で、まずは守りの安定が先決だ。

 今後に向けては好材料もある。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る