補強ゼロで貧打に苦しむ古豪サンフレッチェ。ドイツ人監督が見出したストロングポイントは? (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

クラブに訪れた変革の時

 60分に生まれた決勝点も、このふたりがもたらした。一瞬のスピードで相手を置き去りにした藤井のグラウンダークロスを、逆サイドから走り込んだ満田が右足で豪快に合わせた。

「我々が練習してきた形を作れたと思う」

 スキッベ監督が得点シーンを振り返るように、広島はこのクロスからの攻撃を重点的に取り組んでいるようだ。

 ただ、狙った形が成果を生み出した一方で、やはり課題はせっかくのハイプレスをゴールに直結できないことだろう。

「ボールを奪ってから攻撃に移すことに関しては、何度かチャンスを生かしきれず、シュートにまで持っていけないシーンがあった」

 指揮官が指摘したように、現状では高い位置で奪ってもそこに連動できない。サイドアタックしか手段がないのであれば、対応はさほど難しくはない。

「クロスの練習をすることが多いので、(得点は)自分たちの形だと思います。ただ、そのストロングをクロス以外にも作っていかなければいけません」

 殊勲の決勝点を奪った満田も、その課題を認識しているようだ。スタイルの構築はまだ道の途中にあり、今後もしばらくは産みの苦しみを味わうことになるかもしれない。

 それでも待望の初勝利は、好転のきっかけになることも確かだろう。

「ホッとした気持ちと、うれしい気持ちがある。ここまでの道のりは長かった」と安堵の表情を浮かべたスキッベ監督は、「今までもこのやり方に確信を持っていたが、今回結果が伴ったことで、より強い確信になった」と、自らのスタイルに自信をのぞかせる。同様に選手たちも、迷いなくこのスタイルを突き進んでいくことができるだろう。

 2015年の優勝を最後に、下降線を辿っていたクラブに訪れた変革の時。確かな変化を示した広島に、明るい未来は待ち受けているだろうか----。

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