現在ネルシーニョただひとり。日本サッカーを支えてきた「ブラジル人監督」がJリーグで激減 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

日本代表監督に就任する話も

 ただし、過去には各クラブで数々のタイトルに導いたブラジルの名将たちが存在したことも事実。彼らの存在は、間違いなくJリーグの歴史を彩った。

 たとえば、Jリーグ年間表彰式『Jリーグアウォーズ』で、そのシーズンに最も活躍した監督に授与される優秀監督賞(2017年以降は優勝監督賞)を受賞したブラジル人は、1996年のニカノール(柏)、1997年のジョアン・カルロス(鹿島)、2007年から3年連続で受賞したオズワルド・オリヴェイラ(鹿島)、2011年と2019年(J2)のネルシーニョ(柏)と、日本人以外では最多の4人を数える。

 そのなかでも、リーグ3連覇を成し遂げて鹿島の黄金時代を築いたオズワルド・オリヴェイラは、リーグタイトルを含めて計8つのタイトルに導いたほか、浦和時代(2018〜2019年)も天皇杯で優勝。屈指の名将としてJリーグの歴史に名を残す監督だ。

 メディアの前では物腰柔らかく、時間をかけてじっくり丁寧にコメントする一方で、チーム作りにおいては厳格な規律を重んじる厳しい一面もあったオズワルド・オリヴェイラは、類稀なるモチベーターとしてもよく知られた。その功績は、Jリーグで指揮した歴代ブラジル人監督のなかでも傑出していると言っていい。

 タイトル獲得数という点では、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ/1994年コーチ、1995〜1996年監督)、名古屋グランパスエイト(2003〜2005年)、柏(2009〜2014年、2019年〜現在)、ヴィッセル神戸(2015〜2017年)と、計4チームで監督を務めたネルシーニョも負けていない。

 ヴェルディ時代はニコスシリーズ優勝、柏では2011年のリーグ制覇をはじめ、天皇杯(2012年)とリーグカップ(2013年)のタイトルを獲得。スーパーカップ(2012年)や2度のJ2優勝(2010、2019年)にも導いている。

 1995年には、のちに"腐ったミカン事件"と呼ばれた日本代表監督への就任話が取り沙汰されたこともあった。だが、そんな日本サッカー界に背を向けることなく、現在に至るまで長くJリーグの発展に尽力する。その貢献度は、指揮を執ったチームの領域を超え、日本サッカー界全体に及んでいる。

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