鹿島アントラーズの浮沈のカギを握るJ最高の外国人選手。日本にいるのが不思議なぐらい (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

カンビアッソ、レドンドを彷彿

 今シーズンの開幕戦、ガンバ大阪戦でも、鮮やかなパスを決めている。

 前半20分。ピッチの中央から前線を走る上田綺世へ出したスルーパスだ。立ち足に対して直角に開いた左足からスパッと送り出された、局面を切り裂くような鋭利なインサイドキック。パスを受けた上田は、外せない状況に追い込まれたという感じだった。トラップがやや流れ、シュートの難易度が増した分、その先制弾はナイスシュートに見えた。実際、この試合の上田は持ち上げられ、称賛された。

 サッカーにおいてゴールを決めることは最も重要なプレーになる。一般論として、称えられるべきは、出した側より決めた側だ。しかし、それを差し引いても、ディエゴ・ピトゥカのこのラストパスは、もっと称えられるべき一級品のプレーだと考える。

 もしパスの送り手が、イニエスタだったらどうだっただろうか。中村俊輔、中田英寿、小野伸二、遠藤保仁あたりでも、もっとパスの出し手を称賛する報道になっていたはずだ。

 鹿島はレネ・ヴァイラー新監督の来日が遅れていて、コーチの岩政大樹がしばらく代行監督を務めると聞く。G大阪戦で岩政監督は、鹿島のOBらしくチーム伝統の4-4-2を用いていた。昨季、ザーゴの後任監督として采配を振った相馬直樹監督も同様に4-4-2で戦い、ディエゴ・ピトゥカはその守備的MFでプレーしていた。

 鹿島では初となる欧州人監督が、鹿島の伝統に従順な布陣で臨むのかどうか、定かではないが、ディエゴ・ピトゥカの役割もそれ次第で変化しそうだ。筆者としてはインサイドハーフを勧めたくなる。

 それはともかく、ボランチといえば守備的な選手を連想するが、ディエゴ・ピトゥカは守り屋ではない。低い位置で構えるパサー。その昔、インテル、レアル・マドリードで活躍したアルゼンチン代表のエステバン・カンビアッソを彷彿とさせる左利きのゲームメーカーだ。

 カンビアッソよりボールを持って縦方向に前進する推進力を備えているので、よりスケールの大きなフェルナンド・レドンドの名前も挙げたくなる。カンビアッソの少し前にレアル・マドリードで、金髪を靡かせ、将軍然とプレーしたアルゼンチン代表MFであることは言うまでもない。

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