イニエスタが語る、ニッポンへの愛。いつかは日本代表監督「イニエスタ・ジャパン」を夢見て (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●構成 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

【キャプテン翼に憧れた幼少期】

 三木谷と話していると、イニエスタの脳裏に子どもの頃の思い出が蘇ってきた。

 スペインのラ・マンチャ州にある、人口わずか2000人あまりのフエンテアルビージャ。イニエスタは小さな田舎町で古ぼけた小さなテレビにかじりつき、『キャプテン翼』に心躍らせながら日本を旅していたのだ。

「エンドラインなどなきがごとく、無限に広がるピッチで必死にボール追いかけていたオリベルを観るために、私は日本に"いた"のです」

(※アニメ『キャプテン翼』はスペインでは『OLIVER y BENJI』というタイトルで放送され、大空翼はオリベル・アトムという名前になっている)

 イニエスタは、日本行きを決断した。

「私を日本へ引っ張ってきたのは、『キャプテン翼』の主人公・翼だと言っても間違いないでしょう」

 人生2度目の旅立ちだった。最初は12歳、故郷から500キロも離れたバルセロナへ、FCバルセロナの育成組織「ラ・マシア」に入団するため。そして、2度目は地球の裏側へ、ヴィッセル神戸に入団するため。

 2018年5月、来日したイニエスタは大きな驚きに包まれた。

「自分には想像もできなかったほどの愛情とリスペクトを込めて、みなさんが私を迎えてくれたのです。ヴィッセル神戸のみなさんをはじめ、日本中のサッカーファンが温かく迎えてくれたことに、私は感動しました。まるで、自分の家に戻ってきたようでした。みなさんが扉を大きく開いて、私を優しく迎えてくれました」

 日本、神戸のよさをすべて見よう、体験しようと、イニエスタは妻アンナや4人の子どもたちと一緒に、神戸の街をのんびり、リラックスして散歩することを楽しんでいる。「子どもは親が思っている以上に早く馴染むものです」と、我が子の適応力に驚きながらも、神戸での充実した生活を満喫している。

 自分を優しく迎えてくれた神戸への責任。ファンとの約束。

「美しいサッカーを追及しながらも、勝つためにプレーしなければなりません。個人の栄光のためにプレーしているわけではありません。私たちはファンのためにプレーしました」

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