大久保嘉人は別人格を演じていた。「イエローや退場がなければ200得点を超えていた。でも残念だと思わない」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by スポニチ/アフロ

【期待している日本代表の選手】

 今年は、ワールドカップイヤーだが、大久保は、2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会に出場している。南アフリカW杯の時は、日本代表への期待感が薄く、現地に入ってから大改革を行ない、システム、スタメン、キャプテンまで変えた。大久保は、その時、4-3-3-の左MFに置かれた。

「現地での練習試合で、俺と松井(大輔)さんと圭佑(本田)が前に入ってプレーしたんです。これでいくぞって監督に言われた時は、もう腹をくくるしかなかった。普通にやっても世界には勝てないんで、これでやるしかない。マジで倒れるまで走るしかないって思っていた」

 練習試合後、3人で集まってやるべきことを徹底しようと決めた。

「圭佑には、とにかくキープしてくれと。お前がキープすることで、俺たちが上がって攻撃に参加できる。でも、キープできないとカウンターを喰らって俺たちは守備で下がらざるをえなくなる。そうするとお前が孤立する。大変だが、俺たち3人でやってやろう、そんな話をしました」

 W杯初戦のカメルーン戦、本田のゴールは3人の絡みから生まれた。松井がクロスを上げ、大久保と本田が中に入った。大久保の動きが相手DFの動きをつり、フリーの本田が決めた。この1点がなければ「チームは終わっていた」と大久保は言う。

 W杯はいつの時も勝つのは難しいが、今の日本代表は今年、開催されるカタールW杯の最終予選の序盤戦、相当に苦しんだ。初戦のオマーン戦、アウェーのサウジアラビア戦に敗れ、2敗を喫した。その後、盛り返し、なんとかW杯の出場権が手に入りそうなところにいる。

「今の代表は、いい選手が多いなって思うけど、あんまりワクワクしない。日本人のよさ、技術や俊敏性とかを活かしたサッカーにはたどり着けていない。あと、苦戦しているのは、アジアの国のレベルが高くなっているのもあると思う。今後、ほかの国が伸びて、追いつかれるようなことになると、W杯に行くのが当たり前じゃなく、予選から苦しい戦いをしいられるだろうね」

 チームとして、もうひとつ強さを見せられない日本代表だが、個々に目を向けると、若い選手の活躍が目立つようになってきた。

「碧(田中)と守田(英正)は伸びたな、と思う。特に、碧はここまで成長するとは思わなかった。最初は試合に出られない悔しさを抱えたこともあったと思うけど、試合に出るようになって自信をつけた。今は、動きまわりながら縦パスを常に狙っているし、前に上がってシュートも打てるし、なんでもできる。香川真司もセレッソに入ってきた時は痩せていて、足が遅く、テクニックはあるけどそんなに目立つ選手ではなかった。でも、試合に出ることで自信をつけて、のし上がっていったからね。碧と守田は楽しみですよ」

 田中も守田も今や代表に欠かせない選手になりつつある。ただ、元点とり屋としては、点がとれるストライカーの登場も楽しみにしている。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る