中村憲剛、内田篤人、阿部勇樹......。スター選手の監督姿をすぐ見たい。福田正博が指導者ライセンスについて提言 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

【スター選手の監督姿は話題になる】

 プロ野球では、北海道日本ハムファイターズに新庄剛志監督が誕生した。この抜擢を見て「なるほど」と唸らされた。"ビッグボス"の手腕のほどは今シーズンの見どころでもあるが、新庄監督の就任で話題性に富んだことが、ファンだけに限らず幅広い人たちに「今季は日本ハムの試合を球場で見たい」と思わせる動機づけになったのではないか。

 なにもJリーグに新庄監督が必要だと言いたいわけではない。プロ野球にもJリーグにも共通して言えるのは、興行=エンタテイメントの側面もあるということ。真剣勝負は当たり前で、それに付随する楽しみがあるからこそ、多くの人の興味を喚起できる。現役を引退してすぐのスター選手がJクラブの監督に就任できれば、話題性も生まれて世間へのアピールにもなるはずだ。

 現役時代に一定条件をクリアすれば、引退直後の数年間はS級ライセンスがなくてもJリーグで監督ができるようにしてもいいのではないか。昔に比べてチームの指導体制は分業化が進み、決断するのは監督の仕事だが、戦術・戦略は専門コーチに任せるケースも増えているのだから。

 日本サッカーには空洞化の問題がある。ひと昔前なら、海外移籍は日本代表の主力選手だけのことだったが、いまでは20歳前後の有望株も多くが海外でプレーをするようになっている。彼らが海外リーグで成功すれば、選手キャリアの最盛期を日本のサッカーファンが見られるのは日本代表戦だけになる。しかも、キャリアの晩年をJリーグでプレーすればいいが、そのまま海外で引退するケースが今後は増える可能性もある。

 そうした選手の引退後、Jリーグで監督をする姿を見られたらと思うのだ。ピッチでの鮮烈なイメージが残っている間の就任ならファンの関心もひくだろうし、その選手が現役時代に培った経験もJリーグに還元できるはず。

 もちろん、選手としての能力と監督としての能力は別物というのは理解している。だが、S級ライセンスを持っていても失敗する監督だっている。結局のところ、資質はやってみないとわからないのだ。ライセンスはないけど監督をやってダメなら、その時はS級ライセンスを取得して再チャレンジすればいいだけでもある。

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