2022.01.06

J内定4人を擁する静岡学園、終了間際の悪夢。「筋書きのないドラマ」で国立を前に散る

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【シュートの数はなんと18対2】

 もっとも、ほとんどの時間を相手陣内で過ごしながらも、ゴールだけが生まれない。「クロスに触れていれば得点」という場面も、二度、三度あった。ここで決めきれなかったのが、結果的に静岡学園の首を絞めることになる。

 スコアレスで迎えた後半に入り、ようやく静岡学園に歓喜の瞬間が訪れる。

 60分、前述した左サイドの連動から、野村のクロスをFWの持山匡佑が頭で落とし、走り込んだ小泉龍之介が豪快にネットを揺らした。時間はまだ20分を残していたが、ここまでの試合展開を考えれば、この1点が静岡学園の勝機をぐっと高めた。

 実際に、以降も静岡学園が主導権を握り続け、関東第一にはチャンスらしいチャンスはなし。追加点こそ奪えなかったものの、このまま静岡学園が勝利を収めるだろうと誰もが思っていたはずだった。

 ところが、終了間際に悪夢が訪れる。

 アディショナルタイムを目前にした80分、ロングフィードからの展開で右サイドを突かれると、守備陣が戻りきれず、シュート性のクロスをゴール前に飛び込んだ関東第一のFW坂井航太に押し込まれてしまったのだ。関東第一にすれば、まさに"ワンチャン"をモノにした起死回生の同点弾。静岡学園とすれば、狐につままれたような失点だった。

 まさかの展開に消沈した静岡学園は、PK戦でふたりが失敗。そのうちのひとりが古川であったことも、この試合の悲劇性を高めるものとなった。

 シュートの数は18対2。支配率も決定機の数でも圧倒しながら敗れてしまうのだから、勝負の世界はなんとも不条理である。

 もちろん、讃えられるべきは勝った関東第一だ。

「前半をゼロで抑えられたのが大きかった。PK戦は自信があった」

 勝利の立役者となった守護神の笠島李月が笑顔で振り返ったように、押し込まれながらも集中力を切らさず耐えしのぎ、最後まであきらめない気持ちが土壇場での同点弾、そしてPK戦での勝利につながったのだ。

 たとえ能力で劣りながらも、同じ高校生である。気持ちや姿勢が実力差を覆す、高校サッカーの神髄を見た気がした。