川崎フロンターレ鬼木監督が振り返る2021シーズン。三笘薫と田中碧の移籍後も「誰が出てくるか、期待のほうが大きかった」 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

【もっとできると思うところがいっぱいある】

――3つ目はやはり徳島ヴォルティス戦(J1第29節)からの5連戦でしょうか?

「そこしかないですね。チームの覚悟みたいなものを見せた5連戦でした。僕自身は、1年は12カ月、365日ありますけど、その2週間ですべてが決まるという話を選手たちにはしました。だから、とにかく、この2週間に一人ひとりが全力を注いでほしいと伝えました」

――そこからの5連勝がJ1連覇への弾みになったように思います。ただ、選手たちのコメントを聞くと、周りを見ず、目の前の試合だけを考えているように見えました。先ほどの話にも通じますが、選手たちの目を外ではなく、内に向けさせる秘訣はあるのでしょうか?

「いやー、どうですかね(笑)。でも、大切なのは言い続けることじゃないですか。先ほどの話と一緒で、2位のチームの結果は僕らがコントロールできることじゃない。僕らがやれるのは、目の前の相手を倒し続け、勝ち点3を積み上げていくことだけ。その意味を本当にわかったからこそ、2017年のJ1初優勝もあったと思っています。

 それを選手たちも知り、ほかはあまり関係ないというか、自分たちが勝ち続ければほかとの差は縮まらない。ほかに何かを期待するのではなく、自分たちが常にやり続けるということは、本当にずっと言い続けています」

――結局のところ、自分たちがやり続けた結果がタイトルにつながると?

「と、僕は信じています。それ以外にタイトルを獲るための新しいものが、まだ自分の頭のなかにないからかもしれないですけどね(笑)。でも、やり続けた先にタイトルというものはあると思って、ずっとやってきています」

――クラブにとっても鬼木監督にとっても4度目のリーグ優勝で、通算6つ目のタイトルになりました。今回のJ1優勝に意味を持たせるとすると、どのようなものになりますか?

「これまでと比較すれば、我慢強く戦えるチームになったと思っています。カップ戦にしても、スコアだけを見れば、負けているわけではなく、PK戦などによる敗退でしたから。

 ただ、やっぱり自分としては、勝ちきれていないという思いのほうがどうしても強いんですよね。2019年は引き分けが多かったことで、2020年、2021年と勝ちきる強さを求めてやってきました。だからこそ、まだ勝ちきる強さを身につけることができていないなと。それでも2019年の時とは、同じ課題ではないと思っています。もうひとつ違ったレベルの課題に、選手たちは向き合ってくれています」

――言い換えると、チームはまだまだ成長する余地があるということでしょうか?

「もう、いっぱいありますよ。自分自身もそうですし、チームのところも突き詰めていくと、まだまだ足りないというか、もっと、もっとできるだろうなと思うところがいっぱいあります。たとえば、天皇杯の準決勝。あれだけチャンスを作っても、実際、ゴールはひとつしか奪えなかった。

 そういう意味で言うと、僕自身が今、チャンスと言いましたけど、それらは本当の意味でのチャンスではなかったのではないかなと。チームが突き詰めていくべきところ、いわゆる質になりますけど、そこはもっと突き詰めていかなければと思っています」
(「2022年に向けて――」後編につづく>>)

鬼木達
おにき・とおる/1974年4月20日生まれ。千葉県出身。市立船橋高校から鹿島アントラーズ、川崎フロンターレでMFとしてプレーし、2006年に引退。その後川崎で長らくコーチを務め、2017年に監督に就任。1年目でクラブ初のリーグタイトルを獲得して以降、J1優勝4回、ルヴァンカップ優勝1回、天皇杯優勝1回の実績を誇る。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る