川崎フロンターレ鬼木監督が振り返る2021シーズン。三笘薫と田中碧の移籍後も「誰が出てくるか、期待のほうが大きかった」

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

【自分たちから崩れないことが大切】

――次に思い浮かぶ試合は?

「やっぱり0-1で敗れた(J1第26節の)アビスパ福岡戦です。理由としては、負けたことのない選手たちが多かったんです。2020年から連勝を続けていて、常にこれが何連勝目といった世界しか知らない選手たちがかなりいました。実際は2020年も負けているのですが、アビスパ戦は2021年になって最初の敗戦でした。それだけに、負けという結果に選手たちが引っ張られすぎてはいけないとの思いがありました。選手たちが1敗をすごく重く受け止めていて、仮に連敗すれば尾を引くのではないかとも感じていたので。

 これは実際、選手たちにも話したのですが、2020年以降に加わった選手たちは勝つことしか知らないかもしれないけど、2019年は勝てない時期もあったし、優勝したほかの年も勝ったり負けたりという時期を乗り越えてタイトルを勝ち獲ってきた。だから、自分たちから崩れないことが大切だと伝えました。続く北海道コンサドーレ札幌戦(J1第27節)では、特にそうした歴史を理解してくれている(小林)悠が得点をとってくれましたし、あの試合は本当に意味のあるゲームだったと思います」

――タイミングとしては、三笘薫選手と田中碧選手が移籍したあとで、3試合未勝利が続いただけでも「失速」と表現されていました。

「周りのことについては、自分がコントロールできないところってあるじゃないですか。自分のなかでは、それはそれとして考えるようにしています。だから、選手たちにも周りの声に耳を傾けるのではなく、自分たちでコントロールできる部分にフォーカスしてほしいと話しました。

 監督としては代表クラスであるふたりが移籍した事実は、戦力的にも大変だったのは認めざるを得ないですが、同時に組織というものは誰かが抜ければ、誰かが出てくるもの。これはサッカー界だけに限った話ではなく、きっと一般社会や企業などでも同じではないですか?」

――確かに。

「だから、正直なことを言えば、不安がないと言ったら嘘になりますけど、それ以上に誰が出てくるか、期待のほうが大きかったですね」

――新たな選手が台頭してくる算段があったのでしょうか?

「ありましたね。そう言うと、語弊があるかもしれないですが、もともといる選手にしても、その年に加入した選手にしても、これくらいのトレーニングをしていけば、これくらいのレベルの選手になってほしいという思いや、これくらいのレベルの選手になっていなければ、自分の仕事としてはどうなのだろうかといった思いが常にあります。

 ただ、選手はゲームに出る、出ないで成長のスピードも変わってきます。そのために、なかなか出場機会を与えられていない選手を、その時期にどれだけ成長させてあげられるかが、自分を含めたコーチングスタッフの仕事だと思っています。そういう意味で、新たな選手が出てきてくれたのは、うちのコーチングスタッフがよくやってくれた結果だと感じています」

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