J2からの「個人昇格」で際立った活躍。近年の移籍トレンドを代表する選手たち

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 同じく個人昇格組の活躍が目立ったもうひとつのクラブが、サガン鳥栖だ。

 シーズン序盤、まずは絶好のスタートダッシュを切ったチームに勢いをもたらしたのが、ジェフユナイテッド千葉から移籍のFW山下敬大である。J2時代からの積極的にゴールへ向かう姿勢はJ1の舞台でも変わることはなく、開幕直後からチャンスを生かしてゴールを重ねた。

 初めてのJ1シーズンとあって、夏場以降は"ガス欠"となった感が否めないが、トータル9ゴールは上々の結果だろう。

 そんな山下と競うように得点を重ね、今夏、海外移籍したFW林大地(シント・トロイデン)の穴を埋める活躍を見せたのが、大宮アルディージャから移籍のMF酒井宣福だ。

 もともとの登録ポジションがMFであることからもわかるように、大宮では主にアウトサイドMFでプレーしていた選手である。だが、鳥栖加入後は恵まれた身体能力を生かし、2トップの一角を任されると、秘めたる才能が目を覚ました。今季8ゴールは、J2でのシーズンを含めても自身キャリアハイ。山下に次ぐ、チーム2位の記録である。

 また、前述の2選手とは異なり、ゴールこそなかったが、堅実なプレーでサイドの攻守を担っていたのが、ザスパクサツ群馬から移籍のDF飯野七聖。一昨季はJ3、昨季はJ2、そして今季はJ1と、順調すぎるほどにステップアップしてきた飯野は、鋭い攻撃参加を武器に、決して得点力が高いとは言えないチームに欠かせない戦力となっていた。

 この2クラブ以外に目を向けると、シーズンを通してコンスタントな働きを見せていたのが、ツエーゲン金沢から移籍してきたセレッソ大阪のFW加藤陸次樹だ。

 開幕直後こそジョーカー的な役割が多かったが、シーズン半ば以降は、前線の軸となっていたベテランのFW大久保嘉人に代わり、加藤がその役を担っていたと言っていい。12位と苦しんだC大阪にあって、35試合出場でチーム最多の7ゴールは称えられるべき数字だろう。

 欲を言えば、もう少し得点数を伸ばしたかったところだろうが、チャンスメイクや守備での貢献も含め、個人昇格1年目としては及第点の活躍だった。

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