2021.12.29

Jリーグの移籍事情に異変。今季のトレンド、シーズン途中の移籍で大物選手たちが躍動した

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そしてもうひとり、異例の形でシーズン途中に移籍したのが、清水エスパルスのMF松岡大起である。

 サガン鳥栖のアカデミーで育ち、17歳にしてトップデビューを果たした松岡は、まだ20歳とはいえリーダーシップにも優れ、早くもクラブの顔になりうる選手だった。ボランチを主戦場としつつも、サイドバックやセンターバックもこなす器用さも備えており、チームが目指すサッカーを実現するには不可欠な存在でもあったはずだ。

 ところが、そんな生え抜きの主力が今夏、電撃移籍。しかも、移籍先は鳥栖よりも下位にいる清水だというのだから、驚きは増した。

 そこには鳥栖の厳しい財政事情も影響していたのかもしれないが、ヨーロッパなら、まず考えられない移籍であり、クラブ間の序列が判然としないJリーグならではの移籍とも言えるだろう。

 図らずも残留争いの渦中に加わることになった松岡だったが、移籍後は出場停止の1試合を除き、全試合(15試合)に出場。ボランチとして攻守両面で期待どおりの働きを見せ、清水のJ1残留に貢献した。

 また、シーズン途中の移籍においては、海外組のJリーグ復帰が目立ったのも今季の特徴である。

 DF酒井宏樹(マルセイユ→浦和)、DF長友佑都(マルセイユ→FC東京)、FW大迫勇也(ブレーメン→ヴィッセル神戸)、FW武藤嘉紀(ニューカッスル→神戸)、MF乾貴士(エイバル→セレッソ大阪)、DF安西幸輝(ポルティモネンセ→鹿島アントラーズ)と続き、今夏はちょっとした"帰国ラッシュ"が起きていた。

 酒井のように、自身が望めばヨーロッパに獲得を希望するクラブがいくらでもあった選手もいれば、大迫や武藤のように、ヨーロッパでは思うような出番が得られなかった選手もいる。それぞれ帰国に至った事情は異なるにしても、J復帰後の多くの選手に共通するのは、「さすがは海外組」というプレーを見せていることである。

 酒井が格の違いを見せつけるのは当然だとしても、大迫や武藤もコンスタントに得点を挙げ、神戸がAFCチャンピオンズリーグへの出場権を獲得する原動力となった。日本代表復帰まで果たした武藤に至っては、まさに一挙両得だ。

 今季開幕前にJリーグに復帰したGK権田修一(ポルティモネンセ→清水)にも共通することだが、海外組がバリバリでプレーできるうちに日本に戻ってきてくれることは、Jリーグにとっても歓迎すべきことだろう。海外移籍の若年齢化が進む一方で、こうした流れが定着すれば、好循環となるはずだ。