南雄太「果たせなかったら、現役引退を覚悟していた」。大宮アルディージャを最終節でJ2残留に導いたGKの思い (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

【「寿命が縮むような1カ月だった」】

「南がいなかったらと思うとぞっとする」

 大宮の関係者たちは言う。最終節、ザスパクサツ群馬に3-1と勝利したことで、どうにかJ2残留を決めた。一時は最下位に喘いでいたチームを、見事に浮上させたのだ。

「最後は本当に寿命が縮むような1カ月でした。今は最低限の目標を達成できて、ホッとした、というのが一番の感情ですね」

 そう語る南は、実直にゴールマウスを守った。19試合、1710分間出場。彼はピッチに立ってチームの流れを変え、自らの人生の舵をきった。

 そこで最後に訊ねた。10年前、当時、自身が発した言葉をどう振り返るか?

「以前からこんなことを言っていたんですね(笑)。むしろこの言葉の意味がより一層、今の自分に響く感じですね。あとがないという気持ちは、今回の移籍ではさらに大きいものでした。大宮移籍で自分に課せられたミッションは、『チームのJ2残留』というハッキリとしたもので。それを果たせなかったら、現役引退という結末を覚悟していました。42歳という年齢で、引退の2文字はもう自分の背中にピッタリとくっついていますよ。そのプレッシャーから解放される日は、引退するまでないと思っています」

 サッカー人生に身を投じてきた男の言葉は、一陣の風のように涼やかだ。

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