新天地で復活、吉と出た男たち。今季J1のタイトルは「移籍組」がカギを握っていた (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 今季の柿谷は、選手の組み合わせによって最前線に立ったり、セカンドトップに入ったりと、いくつかの役割を求められたが、それぞれを高いレベルでこなしながらフル稼働。36試合で2414分の出場は、1シーズンを通して常にFWの中心としてプレーしたことの証である。

 加えて、名古屋にルヴァンカップ初優勝をもたらしたことは、新加入戦力としては大きな勲章となったはずだ。

 もちろん、本人は5ゴールという数字には不満もあるだろう。だが、今季J1の最優秀ゴール賞を受賞したオーバーヘッドシュート(第37節vsC大阪)を見れば明らかなように、優れたボールコントロールと意外性のあるアイデアはいまだ健在。自身の役割が整理されれば、まだまだゴール数を増やす余地は十分に残っている。

 最優秀ゴール賞といい、ルヴァンカップ決勝といい、今季の柿谷が古巣相手に大仕事を成し遂げているあたりも、どこか因縁めいていて、復活の印象を一層際立たせているかのようだった。

 そしてもうひとり、今季J1で移籍をきっかけに復活を遂げた点取り屋が、C大阪のFW大久保嘉人だ。

 昨季はJ2の東京ヴェルディに所属し、プロ入り以来初となる無得点のシーズンを過ごした大久保だったが、今季は開幕戦での復活ゴールを皮切りに、開幕5試合で5ゴールを量産。一時は得点ランクトップに立つなど、C大阪のスタートダッシュにひと役買った。

 結局、その後は1ゴールを上積みするにとどまり、今季限りでの引退を決断することになったのは残念だったが、シーズン終盤のプレーぶりを見ていても、ゴールへの嗅覚は依然として鋭い。39歳での引退がもったいなく感じるのは、それだけ今季の活躍が復活を印象づけたということでもあるのだろう。

 一方、派手さでは柿谷や大久保には及ばないながらも、堅実な働きでまさに大車輪の活躍を見せたのが、横浜F・マリノスのDF岩田智輝だ。

 今季、大分トリニータから移籍した岩田は当初、右サイドバックとして新天地のピッチに立っていた。ところが、その後はボランチに、センターバックにと、チーム事情によってポジションが変わっていくなか、それでも求められる役割を確実にこなし続けた。

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