高校サッカーで何が起こっているのか。選手権に初出場はわずか2校。常連、強豪を破ってつかんだ取り組み (3ページ目)

  • 森田将義●取材・文 text by Morita Masayoshi

【スタイルを貫き初出場】

 もう一つの初出場校は、市立長野(長野県)だ。これまで長野県で選手権の出場権を掴んできたのは松商学園や松本県ヶ丘といった中信地域、2017年に県勢最高となるベスト4進出を果たした上田西を始めとした東信地域の高校が占めてきた。長野市のある北信地域は高校サッカー不毛の地と言えるエリアだが、2012年にAC長野パルセイロの黎明期を支えた芦田徹監督が就任し、強化が始まった。

「見ていて楽しいサッカー」で選手が集まり、初出場をつかんだ市立長野 photo by Morita Masayoshi「見ていて楽しいサッカー」で選手が集まり、初出場をつかんだ市立長野 photo by Morita Masayoshiこの記事に関連する写真を見る 就任とともに長野パルセイロとの提携関係もスタートし、市立長野に通いながら長野U-18でプレーしていた選手が、高校2年生になったタイミングで市立長野に転籍する選手が多かった。現在はガイナーレ鳥取でプレーするFW新井光もその一人。来年から大学経由で長野に加入するMF山中麗央を含め、県でも有数のタレントが揃っていた。

 彼らに対し、芦田監督は練習からボール回しを徹底し、ポゼッションサッカーを叩き込んだ。ただ足元でボールをつなぐだけでなく、スペースを使う意識が高く、個人で打開できる選手もいる。"見ていて楽しいサッカー"で県内を席巻し、新井らが加入した2016年にはインターハイ初出場。翌2017年にも2年連続出場を果たし、ベスト16まで進んだが、選手権予選は決勝で敗れた。

 ただ、2年間に蒔いた種は無駄ではない。「小学校の頃から市立長野の試合を観ていて、憧れていた。このチームで、全国の舞台に立ちたかった」と話す主将のDF尾崎裕人は、長野U-15出身。U-18へ昇格もできたが、自ら入学を志願した。MF藤田恭弥、FW橋本泰知といった選手も、長野県では異色と言えるスタイルに惹かれて入学を決めた実力者。

 芦田監督は「新井や山中の時のような強烈な個はいないけど、ボールを保持するとか動かす部分については、4年前よりスムーズ」と、この代について評価する。入学1年目から出場機会を掴む選手も多く、2年生になった昨年は彼らが主力の半数以上を占めた。選手権予選はベスト4に終わったが、集大成と言える2021年への期待を抱かせるチームだった。

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