川崎フロンターレ谷口彰悟。3連覇のためには「システムを変える、人を変えるくらいの大胆さが必要」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by アフロスポーツ

【初黒星からの快進撃】

 イヤなムードが漂うなか、谷口は、これまで自信を持ってやってきたことを続け、自分たちから崩れないように言い続けた。また、チーム内では、ベテランが奮起した。福岡戦後の札幌戦では小林悠がスタメン起用に応えてゴールを決めて活躍し、連敗を阻止した。谷口も9月22日の鹿島戦から復帰。劣勢ながら終了間際に宮城天のすばらしいシュートで逆転勝ちをするなど、カタールW杯最終予選のための中断前の5試合を5連勝で乗りきり、川崎は息を吹き返した。

「みんな、我慢して勝ち点3を積み上げる作業ができたなって思いましたね。でも、勝てるようになったからと言って安心はできなかったです。鬼(鬼木達監督)さんがよく言われるのですが、勝っている時こそ成長のチャンス。勝ったけど、ここはもっとよくできるはずというのが必ずあるので、そこをボカさずに突き詰めて成長のサイクルを作っていく。そこは主将として、意識して昨年からやってきましたし、今年も継続していました」

 ここに川崎の強さの一端を垣間見ることができる。勝てるチームはいじらないというのは、サッカー界では常識のようにとらえられているが、鬼木監督と選手たちは、その常識を疑い、常に違う新しい世界を見ようとしている。その姿勢があるからこそ川崎は、選手もチームも成長し、他と力の差を広げていく。

 終わってみれば、4試合を残しての優勝、2位の横浜F・マリノスに勝ち点で13もの差をつけた。川崎は、2017年、2018年と連覇しているが、今回の連覇はその時と何か異なるものがあるのだろうか。

「2017年の優勝は鹿島とどっちが優勝するのかわからないなかで最後に優勝を決めましたし、18年は安定した戦いで優勝できた。昨年は爆発的な攻撃力があって、圧倒的な強さで優勝することができた。今年の前半戦は自分たちの戦いをしていくことができましたが、ACLのグループステージあたりから、だんだんとチームの疲労の蓄積、主力選手の移籍やケガが続いた。自分たちのサッカーを1年通じてやり続けることができたというよりは、なにがなんでも勝つとか、がむしゃらに勝ち点3を奪いにいくとか、選手ひとりひとりがすごくタフさを身につけて優勝することができたと思うんです。そういう意味では、チームはもちろん、個々の選手がすごく成長した優勝だと思います」

 谷口個人としては、今年は38試合30試合出場、警告は1枚のみ。チームの28失点はリーグ最少失点で、昨年の31失点よりも少ない。

「自分のパフォーマンスについては、ある程度、安定はしていたかなと思います。ケガから復帰して、なかなかコンディションが上がらず、不安を感じていたんですが、ピッチに立った以上はそんなことは言っていられない。悪いなら悪いなりにチームの勝利のためにやる。やりきりましたね。こういう経験は、今後生きてくると思います。あと、久しぶりに代表にも呼ばれて、また目指すべき世界があるというのを再確認できたのも大きかったです」

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