「本当の意味で力がない」鹿島アントラーズの厳しい現状。三竿健斗主将が語った「変わらなくてはいけない」こととは? (2ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • Photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 鹿島は2015年ナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)で優勝すると、翌2016年はファーストステージで優勝し、チャンピオンシップを制してリーグ優勝。そして、天皇杯も手にした。

 監督交代を行なった2017年は最終節で勝ちきれずに川崎フロンターレにタイトルを譲ってしまう。それでも、2018年にACLを獲り(リーグ戦3位)、悲願だったアジア王者となったが、小笠原満男が引退。2019年はリーグ戦3位、天皇杯準優勝でシーズンを終えた。

 その天皇杯決勝を前に、大岩剛監督の退任が発表され、鈴木満は「今までリフォームしながらやってきたけれど、それではもう間に合わない。新築するような編成を組む」と語っている。

 スピリット・オブ・ジーコに代表される明確な哲学がある鹿島は、選手同士が切磋琢磨することで、お互いを育てあい国内最多のタイトルを誇る。だからこそ、高校や大学のナンバーワン選手たちが例年加入する憧れのクラブとして、君臨してきた。

 優秀な選手たちが、互いを信頼し、鍛え合いながら、鹿島アントラーズのサッカーをピッチ上に描いてきた。こういうシチュエーションで効果的なプレーとはなにか? 勝利から逆算し、なすべきことを実行する。些細とも思える小さなことにこだわるから、練習中の強度や熱量も自然と高くなる。先輩の背中を見ながら、ふるまい(プレー)を学ぶ。鹿島に漂う空気はそうやって熟成され続けてきたのだ。
  
 そういった基本的なスタンスは変わらないものの、試合の主導権を握れていないように見えるチームの改革を志したのが、2020年だった。ブラジル人監督のザーゴを招聘し、新戦力も整えた。しかし、コロナ禍ということもあり、2020年シーズンはチーム練習の機会が限られて、飛躍に必要な時間も短く、結果5位で終了している。タイトルも獲れていない。

「昨シーズン築いた土台がある」とスタートした2021年だったが、開幕戦で1点のリードが守れず、1-3で清水エスパルスに敗れると、その後は7試合で2勝2分3敗と低迷してしまい、ザーゴは解任されたのだ。

「アルトゥール・カイキやディエゴ・ピトゥカといった新外国人の合流が遅れてしまったこと」を鈴木は低迷した理由のひとつに挙げた。1月下旬には加入が発表されていたるが、国の感染防止対策の一環で入国が制限され、彼らが合流したときには、すでにザーゴはいなかった。

 鹿島がザーゴに期待したのは、欧州を席捲しているレッドブルグループのメソッドだった。

 レッドブルグループのスタイルとは、先日マンチェスターユナイテッドの監督に就任したラルフ・ラングニックがもたらしたものだ。

 素早くボールを奪い、素早くゴールに迫る。

 4-4-2(4-2-2-2)というシステムを用いるハイプレスの戦術は、ボールの位置に応じて、機能的に圧力をかけていく。そこには緻密さよりも迫力と破壊力が漂い、ポゼッションサッカーに対抗するトレンドとなっていった。

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