元セレソンvsスピードスターの得点王争いは、意地とプライドがぶつかった極上の一戦だった (2ページ目)
前半、よりゴールに近づいていたのは前田のほうだった。横浜FMの縦に速いサッカーが、受けに回った川崎を翻弄していたからだ。
しかし、押し込まれていた川崎が後半、突如牙をむく。大島僚太を投入してボール保持を高めると、相手陣内に侵入する機会が増加。サイドを押し込む時間が増えたなかで訪れたのが、67分に生まれた冒頭のシーンだった。
もっとも、この日の横浜FMは、そのまま屈するようなやわなチームではなかった。仲川輝人、扇原貴宏を投入して攻撃のギアを一段高めると、前田もサイドから中央へとポジションを移す。
そして迎えた74分、素早いリスタートから左サイドに展開し、エウベルのクロスのこぼれ球を前田が落ち着いてネットに蹴り込んだ。
その後もお互いに惜しいチャンスが訪れ、前田にもレアンドロ・ダミアンにも、追加点=単独得点王に立てるチャンスはあった。しかし、再び歓喜は生まれず、試合は1−1の引き分けで終了。両エースは23ゴールで得点王を分け合う結果となった。
「得点王で終えることができ、幸せな気持ちでいっぱいです。前田もすばらしいプレーをしていた。彼と一緒に得点王になれたことをうれしく思います」(レアンドロ・ダミアン)
「まさか自分がこういうことになるとは、想像していなかった。たくさんの人の支えがあったおかげだし、今まで自分がやって来たことが間違いではなかったことの証明にもなった」(前田)
元セレソンの実力者と、今季突如ブレイクしたスピードスター。キャリアもスタイルも対照的な両者だが、今季のパフォーマンスはともに「キング」の称号にふさわしいものだった。
もっとも、得点王争いに注目が集まったこの試合は、優勝を争ったチーム同士の一戦だけあって、高品質なゲームでもあった。
とりわけ可能性を示したのは、横浜FMのほうである。前半からアグレッシブな姿勢を示し、スピーディに相手陣内に押し入ってはセカンドボールを回収し、波状攻撃を仕掛けていく。
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