中村憲剛と佐藤寿人が若手に伝えたいこと。「ラクな選択をして生き残れるほど、この世界は甘くない」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そういう前提があるなかで、自分自身のキャリアの最後のほうで感じたのは、危機感がない若手が増えているなということ。それはクラブ数が増えたことが関係していると思うんですよね。このチームで試合に出られなくても、カテゴリーを下げれば次のチームがあるという認識でシーズンを送っている選手が増えているのかもしれない。

 そういう意味では、サッカーができる環境が増えたことの弊害を少し感じますね。僕とか憲剛くんの若い時は、ここで結果を出さなければ、プロではいられなくなる危機感があった。でも今は、J2でもJ3でも続けられる。受け皿が広がった分、危機感を持ちづらくなっているのかなと。

中村 でもそれって、正しく現状を認識できていないとも言えるかもしれないよね。なぜレンタルで移籍するのかと考えれば、もちろんその時の年齢や立場を考慮したものもあるとは思うけど、現状ではチームにとってそこまで有益ではないと考えられているから。クラブからすれば、いずれ有益な存在になってほしいと期待を込めてレンタルに出すことがほとんどだと思うけど、実際に移籍にはリスクもあるじゃないですか。

佐藤 めちゃくちゃリスクですよ。

中村 レンタル先でも試合に出られなければ、望んだ成長もできないし、結果、戻って来にくくもなる。つまり、どこに在籍していたとしても危機感を持って、成長しなければいけないという本質は同じ。これは難しいことではなく、シンプルな結論です。

---- その本質を知っている選手が成長していけると。

中村 もちろん、若いうちからそこを理解している選手はあまり多くはないと思いますよ。僕たちみたいに40歳近くまでやり続けて、引退したから言えることでもあるとは思います。だからこそ、このタイミングで伝えたいという気持ちはあります。

佐藤 移籍のように大きなジャッジする場面もあれば、日常にも小さいジャッジをしなければいけない場面も多々あります。それぞれの場面で常に正解を選んでいくと、自ずと成長の道を歩めると思います。

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