中村憲剛と佐藤寿人が「お父さん、お母さんに聞いてほしい」。子どもの人間形成で大事なこと (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

佐藤 憲剛くんって、プレー中に「俺、すごいな」と思ったことあります?

中村 あるよ、いっぱい(苦笑)。このパス、すげえなと。それこそバーレーン戦(2008年6月22日@埼玉スタジアム)で寿人に出したスルーパスとか。でも、そう思っても、僕の場合はひとりで何かできる選手ではないから。受けてくれる選手がいなければ自分は成立しないので、常に受け手の選手や自分にパスを出してくれた選手には直接その時に感謝を伝えていました。

 そういう意味では感謝の気持ちは、結構早い段階で持ってプレーしていたかもしれない。自分がすごいと思うのと、天狗になるのとでは違うと思うんですよ。すごいパスが出せるのはみんながいるからであって、みんなのおかげで自分が輝ける。そう思えるかどうかで、だいぶ変わってきますよね。

佐藤 僕は、自分のプレーがすごいと思ったことがないんですよ。憲剛くんとは役割は違うけど意識は同じで、パスをもらえないと何もできないんです。パスというひとつのトライを決断してくれたことに対して感謝しないと、次にパスは出てこないんですよね。

 パスを出してくれた味方のことを考えずに、自分の手柄だと感じていたら、たぶん僕は早い段階でダメになっていたと思う。自分ひとりではなにもできない。まだまだ足りないと思っていたからこそ、常に向上心を持ち続けていられたんだと思います。

中村 日本代表に行くと、みんないいヤツなんですよ。それがこのテーマに対する答えのすべてが詰まっているかなと思います。

 サッカーって勝ち負けがハッキリしてるので、ある意味いろいろなところでマウントを取り合う側面のあるスポーツじゃないですか。なので、「俺、すごいだろ」と言う人ももちろん過去に出会ってきた人のなかにはいましたけど、代表ではそういった類の人、いないんです。強烈な個性を持っている選手はたくさんいましたけど、当たり前ですが、それをひけらかすような選手はひとりもいませんでした。

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