清水エスパルスがJ1残留争いを演じたのはなぜか。残り4節で示した来季への可能性と権田修一が最終節に語ったことは?

  • 望月文夫●取材・文 text by Mochizuki Fumio
  • photo by Fujita Masato

「もちろん目指しているものは間違いないし、徐々に慣れてこれが普通になれば自然と体も動くようになると思うけど、今はどのタイミングで何をすればいいのか、すごく頭が疲れる」

 中堅選手からこんな言葉が聞かれるほど、当初は細かな指示に慣れない状況が続いたが、それでも選手たちは同時に手ごたえも口にし、攻守での改善が徐々に進んだ。

 見える形でロティーナ体制の可能性を示してくれたのが、今季開幕戦だった。苦手としてきた鹿島アントラーズ相手に、しかもアウェーの地で3-1と快勝したのだ。鹿島相手の勝利は6年ぶりだったが、アウェーの地での勝利は2012年以来9年ぶり。試合の主導権を握られ、20本のシュートを浴びながらも、要所を締めた勝利に選手たちは「この1勝は大きいが、ここから続けていくことが大事」と白星先行を誓ったが、理想には遠い厳しい現実が待ち構えていた。

 この勝利以降、第6節で5試合ぶりに柏レイソルから勝利したものの、第7節から9試合連続勝ちなしで降格圏ぎりぎりの16位まで後退。以後は13位まで浮上したのが最高で、終盤まで残留を争うことになった。

 この状況について、ある中堅選手はこんな指摘をした。

「監督の攻守でのやり方は明確だけど、そのやり方に縛られると自分の特長が出しにくくなると思う。試合や練習では監督の戦術を実践することが目的になってしまって、試合に勝つことや相手からボールを奪うことが目的になっていない感じがする」

 同じような指摘が他の選手からもあったが、チームをよく知る解説者も「選手たちの動きがスムーズさを欠いているように見える場面が多い。ちょっと窮屈そうにも見えるし、何が何でも勝ちたいというような気持ちの入ったプレーも少ない気がする」と指摘した。

 シーズンも終盤を迎えた時点での指摘だけに、緻密なサッカーへの浸透はややスムーズさを欠いていたようだが、勝ち点や勝利獲得まであと一歩という試合が多かったのも事実だった。

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