大久保嘉人、Jリーグ最終戦での熱いメッセージ。「うまい選手しかいなくなった」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 この日、ピッチ上は時折、強風が吹いて、空中のボールは不規則に変化していた。実は試合前のクロスからのシュート練習で、大久保は呆気なくミスしている。それは予行演習だったのか。野蛮で粗野にも映るが、意外なほど冷静で計算高く、そこにあるギャップがゴールというスペクタクルを生み出していた。

「最近のJリーグは、"うまい選手"しかいなくなってきた。ワクワクがないというか。いい選手はいるので、自分が持っているものを伝えられたら、もう止められなくなるはずで......」

 大久保は後輩たちに叱咤を送る。ただ、何者かに変身するなんて他のどの選手ができるのか?

「リーグ戦は『これで終わり』というのはあったけど、セレッソは天皇杯が残っているので。まだ『次だ』という気持ちですね」

 Jリーグ最後の試合を終えた大久保は、明朗な声で言っている。浦和レッズとの天皇杯準決勝を含めて、残りは最大で2試合。幻のゴールの他にも、中盤に下がってゲームを作り、ミドルやヘディングなどのシュートで敵を脅かすなど、現役を引退する選手に見えなかった。

「おまえにはサッカーしかない」

 その声を聞いた男のサッカー選手人生の完結だ。

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