OBの岩政大樹が鹿島アントラーズに抱いている危機感。「アップデートできているのかが問われている」 (4ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • photo by J.LEAGUE

――監督の手腕がより重要になっていくのですね。

「そうですね。監督やフロントには、選手たちが納得感を得られる論理や言葉を持たなくてはいけないんです。勝っているときはいいかもしれないけど、うまくいかなくなったときに、問題点や改善方法を提示し続けられるかというのは指揮官に求められることです。そのためには、自分のサッカー、スタイル、哲学を論理的に伝えられて、かつ整合性を持っているかということです。それがある監督は、短期間でチームを作り上げることができるから」

――どんな監督を選ぶのか、クラブの眼が問われてくる。

「たとえば見て学ぶ、背中から感じるという方法で、伝承されてきたものも、言語化、マニュアル化する時代になっています。伝統工芸や伝統芸能でもそういうところがあるだろうし、サッカー、スポーツ全般にも言えることです。今の時代にあった鹿島らしさを再構築していくこと、それを定義するうえでも論理の整合性が大事になっていくので、しっかりと議論したうえで、掘り下げていくことが大事だと思います。

 そのうえで、鹿島らしさと現代サッカーに沿った戦い方ができる監督を選び、選手を選んでいく。そして、論理性、整合性のあるサッカーに落とし込むことを待ったなしで行なわなければならない。これは『時代を捉えているのか?』というサッカーのメッセージでもあると感じます。これまでの鹿島らしさと、今の世界のサッカーをキャッチアップしたうえで、アップデートし、未来へ繋がるサッカーを見たいと思います

――現在の鹿島は若い選手たちが主力として活躍しています。

「戦力的には非常に可能性のある状態です。チーム作りの面で整えば、川崎やF・マリノスと入れ替わる可能性は十分にあると思います。まだ間に合う。同時に今がそのラストチャンスかもしれないという危機感も抱いています」

――それでも、ここ数年5位には入っている。そこは鹿島の底力だという声もあります。

「それこそが、鹿島が鹿島であるということかもしれません。選手たちの団結力やチーム力なんだと思います。ほかのクラブなら、降格争いをしていたかもしれない。そこは鹿島の伝統だと思います。だからこそ、それを継承していくうえでも、重要な分岐点に立っているのではないでしょうか」
 
 岩政氏が重ねた厳しい言葉からは、鹿島アントラーズへの愛情が伝わってきた。創設30周年という節目は、苦悩を伴うものだったに違いない。しかし、その苦しさこそが未来を築く良薬となるという期待が、彼の言葉には詰まっていた。

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