高卒がいい? 大学経由がいい? 福田正博が説くプロサッカー選手のキャリア形成の考え方 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 鹿島のように、毎年世代トップの高卒ルーキーを獲得し、育成する土壌とノウハウを持ったクラブであれば、出場機会を得ながら成長していけるだろう。荒木の同期である静岡学園高校出身の松村優太は、まだ不動のスタメンではないものの、試合出場を重ねながら成長をしている。高卒入団3年目の関川郁万も、2年目から試合に絡むようになり、今季後半戦からスタメンの座に定着している。

 ただ、鹿島が獲得に動くのは世代トップクラスの選手。それ以外の選手はほかのJクラブへ、ということになる。そうした選手がJ1とJ2のクラブのどちらのクラブからも声がかかったら、J1のクラブを選びたくなるのではないかと思う。高校生ならなおさらで、名の通ったJ1クラブのほうが成長できる環境にあると錯覚するかもしれない。しかし、キャリアの形成を考えれば、J2を選ぶのもひとつの手だ。

 J2は、新人選手にとってJ1よりは試合に出場しやすく、試合を通じて成長のサイクルに身を置きやすいメリットがある。

 この成長サイクルから飛躍を遂げた代表例が、日本代表の古橋亨梧だ。中央大学を出てプロキャリアの出発点はJ2のFC岐阜。そこで全試合に出ながら遂げた成長がヴィッセル神戸の目にとまってJ1にステップアップし、いまではセルティックで大活躍するまでになった。

 今季の浦和レッズで主力を張る小泉佳穂(FC琉球→)、明本考浩(栃木SC→)、平野佑一(水戸ホーリーホック→)などもJ2からJ1へ「個人昇格」した選手だ。彼らにとどまらず、ここ数シーズンはいい選手がJ2からJ1へ引き抜かれるのが当たり前になっている。

 もしJ2でプレー経験を積もうと考えているならば、最初からJ2クラブに所属したほうがいいと思う。J1クラブに加入し出場機会を求めてJ2へレンタル移籍、という道もあるが、勝敗への責任感を養う点において見れば、最初からJ2クラブに籍を置くほうがいい。責任感のあるプレーほど、チームスポーツにとって重要なものはないからだ。

 選手にとっては、もうひとつ重要なことがある。それが覚悟。どういうビジョンを描いてプロの世界に飛び込もうとするのか。将来どうなりたくて大学に進むのか。そこをブレずに持ち続けていられるかで成長曲線は変わっていくと思う。

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