J2地力残留も見えた。降格有力候補だったSC相模原がここまで奮闘できたわけ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 苦境にあえぐチームが経験のあるベテラン選手を新たに加え、周囲の選手への波及効果も含めて、戦力アップを図るケースはよく見られるが、相模原の場合、そうではない。

 相模原はこの夏、前述のMF児玉(名古屋グランパス→)をはじめ、DF木村誠二(FC東京→)、DF藤原優大(浦和レッズ→)、MF成岡輝瑠(清水エスパルス→)、MF松橋優安(東京ヴェルディ→)、FW兒玉澪王斗(サガン鳥栖→)と、20歳前後の選手を次々と期限付き移籍で獲得。彼らは一様にJリーグでの実績に乏しかったが、こうした若手を重用することで潜在能力を引き出し、チーム力アップへとつなげた。

 特に木村、藤原、成岡、松橋は完全に主力として定着し、シーズン終盤の残留争いに大きく貢献してきた。リーグ戦出場を重ねるなかで、一時は疲れからかパフォーマンスの低下も見られたが、現在は再びコンディションを上げ、チームのラストスパートに力を発揮している。

 彼らのような、まだ"色のついていない選手"が活躍することは、単純な戦力アップというだけでなく、相模原の魅力を高めることにもつながっていくのではないだろうか。

 期限付き移籍で加わっている以上、彼らが相模原で長くプレーする可能性は、おそらくそれほど高くない。相模原で活躍すればするほど、その可能性がさらに低くなるジレンマも、そこにはあるだろう。

 とはいえ、彼らは所属元での実績がほとんどない。つまりは、プロサッカー選手としての本格的なキャリアを、ここ相模原でスタートさせたと言ってもいい選手がほとんどだ。

 そんな選手たちが相模原でポテンシャルを引き出されたとの評価が定着すれば、この先、さらに才能豊かな選手が相模原でのプレーを希望してくるようになるかもしれない。

 たとえ"借りもの"であっても、そうやって相模原から育っていった選手が、いずれ日本代表で活躍するようにでもなれば、その後に続いてやってくる若い選手にも、そして相模原というクラブにも、自然と注目が集まるに違いない。

 J3降格候補として始まったシーズンもいよいよ大詰め。相模原は下馬評を覆し、J2残留を目前にしているばかりか、クラブの魅力度アップにも成功しようとしている。

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