川崎フロンターレ・鬼木達監督の手腕を福田正博が評価。気になるMVP候補も考えた (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Sano Miki

 昨季も川崎が圧倒的なシーズンを送って優勝しながら、MVPにはオルンガ(当時柏)が選ばれた。28得点でJ1得点王となったパフォーマンスは圧巻だったとはいえ、チームは7位。やはりサッカーは優勝を目指すチームスポーツである以上、基本的にMVPは優勝チームから選ぶべきだと思う。優勝争いが混戦になったのなら仕方ないが、昨年の川崎はそうではなかった。それだけに今年は川崎から選出されてほしいと思っている。

 川崎の誰がもらっても不思議はないが、個人的には谷口彰悟にMVPを与えたいものの、昨シーズンのプレーぶりのほうが受賞に値したという思いもある。家長昭博も候補ではあるが、一昨年に受賞している点がどう影響するか。三笘薫も在籍時の働きぶりはすばらしかったが、途中で移籍した選手がMVPではあまりにも寂しすぎる。脇坂泰斗も資格はあるだろうが、彼にはこのレベルで満足してもらいたくないので、時期尚早な気もしている。

 そのなかで最右翼はレアンドロ・ダミアンだろう。現在20得点もさることながら、副キャプテンを務め、前線からチームのために献身的に働いた。彼がいるからこそ、川崎の攻撃陣が機能した面は大いにあった。

 もうひとりの候補は、旗手怜央だ。前半戦は左サイドバックにチャレンジし、後半戦からは田中碧の抜けたインサイドハーフでチームを牽引した。活動量もさることながら、驚かされたのは彼のボールキープ力の高さ。それは家長レベルと言ってもいいほどで、旗手のところでボールが収まるから、攻撃が形になったシーンもあった。大卒2年目でMVP獲得となるのかは楽しみなところだ。

 その川崎にとって来シーズンの宿題は、アジア制覇になるだろう。国内では圧倒的な強さを誇りながらも、今季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)はベスト16で敗退。これで、鬼木体制で臨んだACLは、2017年ベスト8、2018年と2019年は2年連続グループリーグ敗退に続き、タイトル奪取とはならなかった。

 今年は、グループステージ6試合で27得点3失点と抜群の攻撃力を見せたものの、決勝トーナメントの蔚山戦(韓国)は堅守に苦しみPK戦で敗れた。決勝トーナメントは三笘や田中碧の移籍後にあったものの、仮に彼らがいても突破は難しかったように思う。

 ただ、そこで浮き彫りになった課題をしっかり解消していければ、来シーズンこそは悲願達成に近づくのではないか。自分たちのストロングポイントを最大限に活かして試合の主導権を握り、相手を押し込んでいく川崎らしいスタイルでアジアの頂点に君臨する。それをいまから期待してやまない。

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