川崎フロンターレ・鬼木達監督の手腕を福田正博が評価。気になるMVP候補も考えた (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Sano Miki

 また、小林悠もいた。今季は出場31試合で10得点を決めているが、このうちスタメンは11試合(8得点)。先発起用すればまだまだ衰えの見えない元日本代表FWを、多くの試合でベンチスタートさせられるほどの選手層を持っていたのが、1シーズンを通じてほかのチームを圧倒することにつながった。

「選手のクオリティが高く、選手層が厚かった」と理由づけするのは簡単だが、実際にそうしたチームを作り上げるのは容易ではない。どこのクラブも目指すべき姿を川崎が手にしたのは、フロント力、監督のマネジメント力によるところだろう。

 鬼木監督の手腕で言えば、降格のないレギュレーションで行なわれた昨シーズンの経験を、今シーズンにしっかりと生かした印象だった。昨季スタメン以外の選手たちも数多く試合に関わらせながら、チームとしての成熟度や連携力を高めた。そして、今季はその経験を踏まえてさらに進化させた。

 選手を前面に押し出す控えめなキャラクターな面もあってか、鬼木監督がクローズアップされることが少ない。しかし、鬼木監督が就任した2017年以降の5シーズンで4度目のリーグ制覇を達成した手腕は、もっと高く評価されるべきだ。

 鬼木監督は、2012年から2016年まで率いた風間八宏前監督体制をコーチとして支えたこともあって、2017年に監督に就いて以降は風間体制から攻守のバランスを整えて成功したと評価する向きもある。

 もちろん、そうした面も多少はあるかもしれないが、それだけではこの成功は手にできない。風間監督時代から選手も入れ替わっているなかで、攻撃面は風間監督時代のよいところを継承しながら、鬼木色も打ち出してきた。だからこそ、以前はタイトルに無縁だったクラブが、鬼木体制となってからリーグ優勝、天皇杯、ナビスコカップで6個のタイトルを獲得できたのだ。しかも、今季の天皇杯を制すれば、7つ目のタイトルを掲げることになる。

 その天皇杯の行方も気になるが、今シーズンのJリーグMVPを誰が獲得するかも注目している。

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