「遠藤保仁がいなければ、このサッカーはできなかった」。ジュビロ磐田がJ1昇格を果たした3つの理由

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • photo by AFLO

 その結果がゴール量産だった。サッカーキャリアの中で、シーズン最多得点は18だったが、その数字をあっさり超えた。

 そして昇格を目の前にした10月下旬には、リスペクトする鈴木監督が体調不良でチームを離脱。その出来事が昇格への思いをさらに加速させることになった。

「監督は選手にストレスをかけない人。厳しく管理する監督もいると思うが、何事にも自由にやらせてくれる。選手のことを思ってくれていることも伝わってくるし、外国人である自分にも分け隔てなく接してくれる。そんな監督のためになら、何でもできるという思いがある」(ルキアン)

 チームのために献身的に、そしてたどり着いた昇格だった。

【不可欠だったベテラン遠藤の存在】

 昨年10月にG大阪から期限つき移籍で加入した遠藤。半ば昇格を諦めかけていたチームを蘇らせ、奇跡の逆転昇格もあるのではと可能性を持たせた。かつて日本代表をもコントロールしていたレジェンドの残留は、J1昇格を目指す磐田には最大の好材料だったはずだ。

 その遠藤は自身初めてとなる故郷・鹿児島でのシーズン前キャンプに参加。その初日となった1月28日に41回目の誕生日を迎えると、自身に言い聞かせるように今季の明確な目標をメディアに明かした。

「今年最大の目標はJ1昇格達成。長いシーズンなのでいろいろなアクシデントは起こると思うけど、目標を達成して笑顔でシーズンを終えたい」

 いろいろなアクシデントという言葉に大きな意味はなかったはずだが、早速船出から予想外の展開に見舞われた。まさかの開幕2連敗発進だ。22チーム中20位という数字に周囲は驚きを見せたが、そこは百戦錬磨のベテランだけに焦りなど見せない。その空気感は若い選手にも伝わった。

 そこから、チームが完全回復しないうちに2度目のアクシデントが起こった。先発出場を続けていた第5節に足をねん挫し、次節ファジアーノ岡山戦はベンチ外となったのだ。頼みの司令塔の不在が大きなマイナスになると思われたが、鈴木監督の「ここで無理をするよりも、しっかり治したほうがいい」という冷静な決断だった。その窮地を救ったのもまたベテランである。代役としてプレーした元日本代表MF今野泰幸が、今季初の完封勝利に導いたのだ。

「バランスを見てポジショニングを取ったり、今野らしさを見せた。センターバックが得意という認識だったが、ボランチでもすばらしい」と指揮官は絶賛した。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る