「誰々が抜けたから」と言わせなかった川崎フロンターレの優勝。昨季とも違う歴史的な強さを見せつけた

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 鬼木監督は今季を振り返って、「勝負強くはなっているのかな」とチームの成長を語る。

「気持ちだけでは勝負事は勝てない。経験や全体の意思統一とか、(試合の状況が)いい時にはどんどん(攻撃に)いくし、難しいと思ったら全員が把握して我慢する使い分けが徐々にできてきている」

 とはいえ、夏場に入り、その強さに陰りが見え始めたことも確かである。指揮官も「拮抗したゲームが増えてきている」という表現で、実感を口にしている。

 思えば、今季の川崎は戦力減からのスタートだった。

 長年チームを引っ張ってきたベテランのMF中村憲剛が、昨季限りで引退。また、中盤の要だったMF守田英正はポルトガルに新天地を求めた。鬼木監督は言う。

「そういうものにシーズン最初から引っ張られないようにしないといけないと思っていた。結果が出ないと、『誰々が抜けたから』と話題になる。そうならないためにも、結果を残すことを考えなくてはいけなかった」

 それでも、順調すぎるほどに結果を残してきたことはすでに記したとおりだが、今夏、MF三笘薫、MF田中碧がそろって海外移籍でチームを離れると、さすがの川崎もその穴を埋めることが容易ではなくなった。

 副キャプテンとしてもチームを支えたエースストライカー、FWレアンドロ・ダミアンが語る。

「昨季は複数得点を重ねるような試合を繰り返すことができたが、今季は難しいシーズンだった。前半戦はそれなりの形で試合を重ねられたが、薫と碧の移籍でチームは新しいところからのスタートとなり、チームメイト同士がフィットしなければいけなかった」

 東京五輪開催による中断期間が開けた8月、川崎は第24、25節で2試合連続の引き分けに終わると、悪い流れのなかで迎えた第26節でアビスパ福岡戦に0-1と敗れた。今季唯一の黒星は決して事故ではなく、なかば必然的に巡ってきたものだった。

 MF脇坂泰斗が振り返る。

「辛い時期というか、個人的になかなか結果が出ない時期があった。首位に立っているプレッシャーを少なからず感じながら、それを楽しさに変えてやろうと言っていたが......」

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