「デュエル勝利数=最強」ではない? サッカーのデータは背景を知ってからが面白い (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 そのため遠藤が世界最高クラスの『デュエル王』のように言われたりする。確かに遠藤のストロングポイントであるのは間違いないが、このデータには裏があることも知らないといけない。

 今季も、遠藤航はブンデスリーガのデュエル勝利数上位で、現在2位になっている(10月24日の9節終了時点)。トップ5の選手に目を向ければ、デュエル勝利数だけでは気づけないものが見える。

1位:ダニーロ・ソアレス(ブラジル・DF)/ボーフム
2位:遠藤航(日本・MF)/シュツットガルト
3位:ジュード・ベリンガム(イングランド・MF)/ドルトムント
4位:ニコ・シュロッターベック(ドイツ・DF)/フライブルク
4位:ケビン・ムバブ(スイス・DF)/ボルフスブルク

 これだけではわかりにくいので、現在のブンデスリーガの順位を記す。

1位:バイエルン
2位:ドルトムント
3位:フライブルク
4位:レバークーゼン
5位:ウニオン・ベルリン

 ボーフムは14位、シュツットガルトは12位、ボルフスブルクは9位だ。

 首位を走るバイエルンからは左サイドバックのアルフォンソ・デイビス(カナダ)が、デュエル勝利数ランク12位にいるものの、中盤の守備的MFのヨシュア・キミッヒやレオン・ゴレツカ(ともにドイツ)のデュエル勝利数は30位以下になっている。

 もちろん、バイエルンの選手たちがデュエルに弱いわけではないだろう。ただ、デュエルそのものの回数が少ないから、彼らがデュエルで勝利しても、ランキングで上位にこないのだ。なぜなら、バイエルンは自分たちがボールを持ってポゼッションしながら試合を進めるからだ。

 対して遠藤航のシュツットガルトは、ボールを握れるケースが多くない。そのため守備を固めて中盤での競り合いで相手ボールを奪いにいく。必然的にデュエル回数は増えるし、そこで勝利すればランキング上位になっていくカラクリなのだ。

「ブンデスリーガのデュエル王」という言い方はとても響きが良く、単純に「おっ、すごいな」と思わせるものがある。しかし、そのデータの背景には所属するチームのプレースタイルが影響している。こうした事情を知るのも大切だろう。

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