湘南ベルマーレ、横浜FCが残留するためには何が必要か。直接対決は湘南に軍配

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

Jリーグクライマックス2021

「しびれるな、これは......」

 メインスタンドの一角、湘南ベルマーレの関係者が感極まった声でそう洩らした。観客席では拍手とハリセンを叩く音が重なり合い、スタジアムは祝祭の様相を呈していた。ホームスタジアムで終盤になってからの逆転勝利を飾っただけでなく、残留争いの直接対決を制した愉悦は格別で、それは"生きている実感"と表現しても誇張ではないだろう。

 まさに、残留争いの醍醐味だ。

 10月23日、平塚。17位の湘南は、本拠地に19位の横浜FCを迎え、2-1と勝利を収めている。「残留を争うチーム同士の対決は勝ち点6を意味する」と言われる。残り5試合、湘南は16位に浮上して降格圏から抜け出した。一方、横浜FCは最下位に転落し、降格に一歩近づいた。

 今シーズンはコロナ禍の影響で、4つものクラブが降格する。10月22日時点で13位のガンバ大阪(勝ち点37)、14位の柏レイソル(37)もまだ十分に巻き込まれる可能性が残る。15位の清水エスパルス(32)はこの時点ではゲーム消化が一つ少ないが、16位の湘南(31)、17位の徳島ヴォルティス(30)、18位の大分トリニータ(28)、19位のベガルタ仙台(26)、20位の横浜FC(25)が僅差で並び、まだ二転三転がありそうだ。

 残り5試合で湘南と横浜FCが残留する条件とは何か?

横浜FC戦で決勝ゴールを決めた山田直輝(湘南ベルマーレ/左)横浜FC戦で決勝ゴールを決めた山田直輝(湘南ベルマーレ/左)この記事に関連する写真を見る まず湘南は、「横浜FC戦の勝利を勢いにして突っ走れるか」がカギになるだろう。

 残念ながら、湘南は戦力的にも戦術的にも"決め手"は乏しい。浮嶋敏監督から山口智監督に代わり、今回の試合まで6戦勝ち星なし(2分け4敗)。横浜FC戦も3-5-2というより5-3-2に近い布陣で、攻めあぐねていた。ビルドアップはほぼ捨て、長いボールを蹴り込み、安全第一の「堅い試合」を選択。田中聡、平岡大陽が絡んだ崩しや、ウェリントンのパワー、キープ力は可能性を感じさせたが、どれも単発に終わった。

 局面が変化したのは、後半18分、横浜FCにリードされてからだった。

 スイッチが入ったかのように前への意識が強くなった。横浜FCが気持ちまで守りに入ってしまったのもあったか。湘南は大橋祐紀、山田直輝らを次々に投入し、飲み込むように押し込んだ。

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