一時J2最下位で非常事態だった大宮アルディージャ。降格の危機からは脱したのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 試合終盤、大宮が見せる攻撃には迫力があった。選手を変え、システムを変え、あの手この手で攻撃に幅と厚みを持たせ、金沢ゴールに迫っていった。

 金沢の柳下正明監督は「2-0になって大宮がどんどん(攻撃に)きて、それを受けてしまった。そんなに怖がる必要はなかったが、結果的にやられた」と話していたが、言い換えれば、それだけ大宮が圧力をかけることができていたということでもあるのだろう。

 同点ゴールは85分。MF小野雅史のスルーパスにFW河田篤秀が抜け出し、相手GKとの競り合いでこぼれたボールを、途中出場のFW中野誠也が押し込んだ。

 執念を感じさせる同点劇。だが、元を正せば、2点のビハインドは身から出た錆、である。

「2得点には絡んだが、自分はゴールを決めていないし、チームは勝っていない。(自分がチームを)勝たせられる選手じゃなかった。今日は全然ダメというか、まだまだだなというのは感じた」

 この試合だけで5つのポジションをこなし、2ゴールをお膳立てした小野が、満足する様子をまるで見せなかったのも当然だ。

 振り返れば、2016年の大宮はJ1で年間5位。そこからわずか5年でJ3降格目前まで転がり落ちたチームに、ひとまず失われた自信を回復させ、とにもかくにも練習でやってきたことをピッチで発揮させる作業は、簡単なことではないのだろう。

 霜田監督は言う。

「選手を成長させながら勝ち点をとりたい」

 最悪の事態は脱した、と言っていいのかどうかはわからない。

 だが、大宮が苦しみながらも、一歩ずつ、慎重に、前進し始めていることだけは確かである。

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