一時J2最下位で非常事態だった大宮アルディージャ。降格の危機からは脱したのか

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 すると、立ち直りの気配を見せない大宮は、12分にもピッチ中央でのパスカットから絵に描いたようなカウンターを受け、またも失点。試合は、たちまち2点を追う展開となった。

 結果的に、前半なかばから試合の主導権を握った大宮が、前後半に1点ずつを返して2-2と引き分けた。試合展開を考えれば、よく追いついたとも言えるが、「勝ち点3をとらないといけない試合を自分たちで難しくし、勝ち点2を落としてしまった」(霜田監督)という見方のほうが、実態に則しているのだろう。

「点をとることは練習でやってきた。点をとる形はチームで共有されてきている」

 霜田監督はチームの成長に手応えをうかがわせるが、だからこそ、無駄な失点があまりにももったいない。そんな印象の試合である。

 とはいえ、一時は最下位に沈んでいたチームである。

 必ずしも思うような結果が出なくても、少しずつ傷の手当を施しながら、選手を勇気づけ、自信を持たせてピッチに立たせる。今はそれを続けていくしかないのだろう。

 指揮官が発する言葉の一つひとつからは、そんな苦心の様子がうかがえる。

「(0-2から)すばらしいプレーをしてくれた。(点をとるために急遽)システムを変えても、選手はやらなければいけないことを理解してやってくれた」

 金沢戦後、そう言って選手を称えた霜田監督は、立ち上がりの2失点について問われると、「何が悪かったかは、ビデオを見れば一目瞭然。選手たちは僕が言わなくてもわかると思う」と言い、こう続けている。

「次にやらなければいい」

 チームが置かれているのは、残留争いの真っ只中。ひとつの勝ち点が、ひとつのゴールが、天国と地獄を分けてしまいかねない状況である。

 にもかかわらず、あたかも育成年代の指導者が口にするかのような言葉を聞かなければならないあたりに、現在の大宮のチーム状態がよく表れている。

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