同年代の久保建英の域に迫れるか。川崎フロンターレの20歳が今季J1の優勝争いを左右しかねないゴールを決めた

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by KYODO

 前節(第29節)終了時点で、首位を行く川崎フロンターレは28試合を消化して勝ち点69。これを追う2位の横浜F・マリノスは29試合を消化して65。勝ち点差は4ながら、両者の消化試合数には1試合分の差があった。

 9月22日。試合のない横浜FMに対し、川崎は29試合目を戦った。

 川崎、横浜FMの2チームに絞られた優勝争いは、試合数が並べばより鮮明になる。しかも対戦相手は鹿島アントラーズで、アウェー戦だ。ここで川崎が敗れれば、勝ち点差は4で変わらないが、川崎が勝てばその差は7に大きく広がる。川崎対鹿島は、残りが9試合になった終盤の展開を占う上で、見逃せない試合になった。

 筆者の見た目では、戦力で上回るのは横浜FMのほうだ。勝ち点が同数で並ぶなら優勝へは横浜FM有利と見る。4差でもほぼ互角と見るが、7差に広がるとさすがに川崎有利と言わざるを得ない。

鹿島アントラーズ戦で決勝ゴールを決め、チームメイトに祝福される宮城天(川崎フロンターレ)鹿島アントラーズ戦で決勝ゴールを決め、チームメイトに祝福される宮城天(川崎フロンターレ)この記事に関連する写真を見る 鹿島戦。試合は後半16分に動いた。鹿島の左SB安西幸輝の折り返しを、右MFファン・アラーノが頭で合わせ先制する。試合はその後も鹿島ペースで推移した。横浜FMファン及びJリーグの混沌した展開を願うファンにとって、歓迎すべき展開になった。

 鹿島がよかったというよりも、川崎のサッカーがよくなかったと言うべきかもしれない。まさに田中碧、三笘薫の穴が埋まっていない状態にあった。特に冴えなかったのは、三笘のポジション=左ウイングで起用された新外国人選手マルシーニョだった。J1で先発を飾ったのは前節の徳島ヴォルティス戦に次いでこれが2試合目だったが、身体がフィットしていないのか、それほどうまくないのか、期待感を抱けないプレーに終始したことも、試合が鹿島ペースで推移した大きな要因である。

 この流れを変えたのは、川崎の鬼木達監督の選手交代だった。交代枠5人制で行なわれている昨季から、どんな試合でもその枠を使い果たそうとしてきたJリーグで最も選手交代を積極的に行なう監督である。日本代表の森保一監督にはない魅力と言えばわかりやすいだろう。選手の使い回しがうまいので、選手はたとえ控えに回っても、高いモチベーションを維持できる。

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