監督交代、乾貴士の復帰......不振のセレッソ大阪、新体制は光明を見出せるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 クルピ監督は、その戦術をフィーリングにしてしまった。

 これは今季開幕直後のコラムでも書いたことだが、当初はまだロティーナ時代の選手が残り、戦い方を継承しているところがあった。大久保嘉人が開幕から神がかったようにゴールを量産し、好スタートを切ることができた。しかし、試合を重ねるうちにロティーナ色は薄まっていった。戦術的に破綻することは目に見えていた。

 事実、満足にボールをつなげられず、自陣から出られないような時間が増えていった。人海戦術で守り、一発のカウンターでどうにか勝ち点を稼ぐ。それが精いっぱいで、長続きするはずはなかったのだ。

「ここ何試合か、縦に早く、というか、速い攻撃ばかりで。『ボール取ったら前に』が強すぎると思います。それで失って、相手に押し込まれて。チーム全体でもう少し(ボールを握って)押し込めるように、話し合いをしていかないと......」

 5月下旬にホームでサンフレッチェ広島に1-2で敗れた後、奥埜は警鐘を鳴らしていた。単調な攻撃、規律が緩んだ守備。結果以上に、プレー内容は劣化の一途を辿った。

 クルピはかつてセレッソを率いた時、二列目の有力選手を抜擢し、自由な気風のサッカーを生み出した。香川真司、乾、清武、家長昭博、柿谷曜一朗などを覚醒させた手腕は見事だった。しかし、時代を経て、Jリーグも戦術的なサッカーが進み、フィーリングだけではどうしようもないフェーズに入っている。相手ゴール前に近づくにはボールをつなげる必要があり、攻撃を封じるには緊密なラインで対抗しなければならなかった。

 クルピは以前と同じく、若手に積極的な出場機会を与えた。その点では、副産物は生み出したと言える。FW加藤陸次樹は5得点を記録し、DF西尾隆矢もたくましさを見せるようになった。
 
 しかし、チーム全体としては厳しい結果で、監督交代は必然だった。

「ハードワーク」

 それが、小菊新監督が選手に求めるベースになるという。ルーズになっていた守備の決め事を明確化し、攻撃のオートマチズムも取り戻す。ロティーナ時代への回帰に近いかもしれない。

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