ロティーナ監督招聘で躍進を期待も清水エスパルスがパッとしないのはなぜ?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 直近の第25節、湘南ベルマーレ戦もそんなチーム状態を象徴するような試合だった。

「準備してきたアイデアを出すという面では、いいスタートを切れた」

 ロティーナ監督は試合序盤をそう振り返ったように、前半半ばまでにより多くのシュートチャンスを作っていたのは、清水である。

 しかしながら、先制したのは湘南だ。ロティーナ監督の言葉を借りれば、「修正すべき点はあったが、準備してきた形でゲームを進めていくなかで、彼ら(湘南)のゴールが生まれた」のである。

 サイドからは簡単にクロスを入れられ、ゴール前では簡単にヘディングで競り負ける。人数は十分足りていたはずなのに、何とも呆気なく、もったいない失点だった。

 幸いにして、この試合はFW鈴木唯人が力強いドリブル突破からスーパーゴールを決めてくれたおかげで、1-1の引き分けに持ち込むことができた(今季10試合目の引き分けだ)。だが、厳しい見方をすれば、個人能力頼みの"一発"以外に得点の手段がなかったとも言える。

 チームとして幅を使ったボールポゼッションで相手守備網を広げながら、最終ラインの背後を突いていくようなチャンスメイクは(過去の例に照らせば、それもまたロティーナ監督のチームらしさであるはずなのだが)、あまり見ることができなかった。

 これでは、勝ち点3を手にする確率が高まらなくても仕方がない。直近の5試合を見ても、引き分けと負けが交互に並び、リーグ戦では長らく勝利から遠ざかっている。

 しかも、清水の戦いぶりから受けるそうした印象が、開幕当初からあまり変わっていないのが気になるところだ。

 新監督が求めるサッカーに適応するのにはそれなりの時間がかかるとしても、すでに今季J1はおよそ3分の2が終わっているのである。にもかかわらず、練度が高まっているという明らかな様子はうかがえない。

 結果的に今夏、新外国人選手のMFホナウド、MFベンジャミン・コロリをはじめ、DF井林章(サンフレッチェ広島→)、MF松岡大起(サガン鳥栖→)らを獲得し、シーズン途中にして大量補強を敢行するに至っている。

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