「おまえ、今、この時のように泣けるか」。恩師の言葉から生まれた、梅崎司の覚悟と自信 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 長田洋平/アフロスポーツ

「おまえ、今、この時のように泣けるか。この時はチームの中心でやってやろうという思いがあったからこれだけ泣けるんだろ。今のお前は、泣けるぐらいやってるのか」

 梅崎は、その通りだなと思ったという。

「曺さんと日々、コミュニケーションを取っていく中で、ヒントとなる言葉をもらえるんですけど、『えっ、それ、違うんじゃない』という言葉もあるんです。でも、自分のプレーが良くなっていくと、曺さんの言っていたことと合致することが増えて。この人は、本当に先のことが見えているんだなって思いました」

 2018年、梅崎は3-4-2-1の左の2シャドーのポジションを確保し、29試合4得点2アシストを残し、自分を取り戻した。チームもルヴァン杯で優勝を果たし、リーグ戦は最終節までJ2降格争いに巻き込まれたが最終的に13位でJ1残留を決めた。

「2018年は、自分にとって成長の1年になりました」

 梅崎は、笑顔で、そう言った。

 だが、梅崎を湘南に呼び、鋭い牙を取り戻させた曺は2019年、パワハラ問題でチームを去った。

「寂しかったですね。僕は曺さんがいたから湘南を選びましたし、2018年はチームが成長した結果、ルヴァン杯で優勝できた。2019年はさらに、その上を目指そうと考え、少しずつ形が見えてきたところだったので、すごく残念でした」

 曺は、チームを去る際、梅崎にこう言葉を残したという。

「司は、司らしく頑張ってくれ。まだまだだからな」

 その「まだまだだから」という言葉が今も梅崎のやる気を駆り立てている。

 いよいよ東京五輪が始まる。

 吉田麻也、遠藤航らOAの選手に加え、久保健英らタレント揃いのU-24日本代表は、過去最強とも言われ、メダル獲得への期待が高まっている。

 梅崎自身もかつて北京五輪を目指して戦った。

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