U-24代表でも注目のフロンターレ旗手怜央。「頭の中がぐちゃぐちゃ」からSB挑戦で新境地

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ガンバ大阪に1−0で勝利した天皇杯決勝でも左SBとして先発出場した旗手は、ひとつの手応えを感じていた。

「あの天皇杯決勝は、自分がチームのためになれていると思えた試合だったんです。それがあったので今年もSBで試合に出ても、こなすというのではなく、自信を持ってプレーできるようになりました。あの試合をきっかけに、見える角度が変わったというか。

 SBでプレーしたことで、インサイドハーフに戻った時も、今はここにいてほしいんだな、ここに走ってほしいんだな、ここに出してほしいんだなと、チームメイトの考えや感覚が掴めるようになりました。複数のポジションでプレーしたことによって、そのポジションごとの特性がわかって、プレーを予測できるようになったんです」

 チームがJ1優勝と天皇杯優勝の2冠を達成した昨シーズン、旗手はリーグ戦31試合に出場して5得点を挙げた。大卒ルーキーとしては"まずまず"どころか"十分"な成績と言えるだろう。ただ、旗手は首を横に振る。

「1年目にしてはよくやったと言われる数字かもしれないですけど、一緒に加入した(三笘)薫があれだけの数字(30試合13得点)を残していることを考えると、比べるわけではないですけど、満足できる結果ではなかったですし、自分自身でも、もっと、もっとできたのではないかと感じました」

 旗手がまず目を向けたのは、31試合中17試合が途中出場だったという時間だった。

「毎年、毎年が勝負の年だと思っていますが、プロ2年目はとくに勝負の年。プロ1年目の結果が自分にとっての指標になるので、それ以上の成績を残せる可能性もあれば、それを下回ってしまう可能性もある。

 誰かと比べるのではなく、自分の残した結果を上回りたい。そう考えた時に、まずは90分ではなく、90分以上走れる体力と身体作りをしなければと思い、個人的にシーズンオフもトレーニングしました」

 その決意と努力は迎えた今シーズン、如実に成果として表れている。出場した16試合すべてが先発出場、フル出場は9試合にも及ぶ(6月1日時点)。5人交代制を考えれば、どれだけ旗手がチームにとって大きな存在になったかが見て取れる。

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